こち亀の大阪編はなぜつまらないと言われる?通天閣署の賛否
- 2026.09.15
- こちら葛飾区亀有公園前派出所
で、本音のところ、どうなの? こち亀の「大阪」、つまり通天閣署と御堂春が出てくる回は、ぶっちゃけ評価がくっきり割れています。正直に言うと、「つまらない」と言われる理由にはちゃんと筋がある。でも、それだけで切り捨てるのはもったいない。順番に整理します。
【ネタバレ注意】本記事には『こちら葛飾区亀有公園前派出所』140巻・143巻・179巻の大阪関連エピソードのネタバレが含まれます。
で、そもそもこち亀の「大阪」って何だったの?
まず事実から。御堂春が初登場したのは、2004年6月発売の140巻の第1話「通天閣署・御堂春登場!!の巻」です。1976年の連載開始から、30年近くたってからの新キャラでした。
集英社の140巻紹介ページでは、春は通天閣署の婦警。紹介文の言葉を借りれば「子供のように小柄な春は、両さん顔負けの暴れん坊で無鉄砲」で、署の面々も「飛び切りの変人揃い」とされています。
続く143巻(2005年1月発売)の紹介文では、大阪出張の両さんと中川が路地の串かつ屋で春と再会し、そこが春の実家だったと明かされます。そして「東京と大阪の違いで、春と両さんは大衝突」。この東京対大阪のぶつかり合いが、大阪回の基本エンジンです。
さらに179巻(2012年4月発売)の目次には「こちら通天閣署別館の巻」「隣の大阪さんの巻」が並びます。通天閣署が亀有に別館を構え、派出所の隣にやって来るという筋書きは解説サイトなどで紹介されているもの。タイトルからも、大阪が「旅先」から「ご近所」に変わった節目の巻だと分かります。
| 巻(発売) | 目次に並ぶ大阪関連の話(抜粋) |
|---|---|
| 140巻(2004年6月) | 通天閣署・御堂春登場!!の巻/大阪捜査網!?の巻/大阪通天閣署ラプソディーの巻 |
| 143巻(2005年1月) | 大阪はわての地元でんがな!の巻/通天閣ジャックあらわる!の巻/大阪の一番熱い日!!の巻/オールボアール大阪の巻 |
| 179巻(2012年4月) | 気がついたら大阪の巻/こちら通天閣署別館の巻/隣の大阪さんの巻 |
※話タイトルは集英社公式サイトの電子版目次より。3冊とも収録は9話ずつです。
なぜ大阪の回は「つまらない」「嫌い」と言われるのか
ここからは読者の声です。Q&Aサイトの質問と回答、掲示板の書き込み、巻ごとのレビューブログを見比べると、「つまらない」と言われる理由はだいたい次の4つに集まります。筆者の推測ではなく、実際に複数の場所で見かけた意見です。
理由1:東京と比べて見下す会話がくり返される
まず目立つのがこれ。「妙な関西弁でいちいち東京を見下したり、大阪と比べたり」という趣旨の回答が、2014年のQ&Aサイトでベストアンサーに選ばれています。
掲示板でも「大阪と東京を比較してばかり」で「ネタがワンパターン」という声が目立ちます。143巻の紹介文にある「東京と大阪の違いで、春と両さんは大衝突」が、そのまま苦手ポイントになっている形です。
理由2:両さんが「負け役」に回りやすい
次に目立つのが、両さんが春に言い負かされたり、損をしたりする展開への不満です。「春がえこ贔屓ってレベルで勝つ」という書き込みがあるほか、179巻のレビューブログにも「ハルの存在が両さんをマヌケにしてしまう」「以前なら両さんが気づく側だったはず」という感想がありました。
両さんが好き勝手やって、最後にしっぺ返しを食らう。その痛快さを期待している人ほど、大阪勢に押される両さんを見てスカッとしない。気持ちは分かります。
理由3:大阪人のイメージが誇張されすぎている
関西の読者からの違和感も根強いです。関西人を名乗る回答者が「関西人の気質を誇張されているのが鼻に付く」と書いていますし、掲示板でも「テンプレとして古い」という指摘が見られました。
ギャグ漫画の誇張は本来お家芸です。ただ、実在の地域が題材になると、笑える人と引っかかる人が分かれやすいのも事実でしょう。
理由4:「最近のこち亀」への不満とセットで語られる
見逃せないのが、大阪が単独ではなく「最近のこち亀はつまらない」という流れで挙がる点です。先のベストアンサーも、部長や中川のキャラの変化を嘆いたうえで「そこに大阪が登場して」と続けています。
寿司屋の一家など、あとから加わったキャラと並べて、新キャラが増えてから変わったと語られることもあり、大阪はその象徴にされやすい立場です。179巻のレビューブログも「未だに通天閣署のキャラは馴染みがない」と書いていました。
じゃあ、その批判は妥当なのか?
ぶっちゃけ、「こち亀の大阪はつまらない」という批判は、半分は妥当で、半分は好みの問題だと思います。
面白いのは、擁護する側が挙げるポイントが、批判とほぼ同じ場所にあること。2016年のQ&Aサイトには「粋な関西弁で随所で東京をイジったり」「元気で可愛らしいキャラも好き」と、通天閣署の面々を面白いと評価する読者の回答があります。同じ東京いじりが、ある人には見下しに、ある人には粋に見えているわけです。
掲示板にも「両さんと張り合えて恋愛関係にはならない女」が出てきてもいい、という擁護がありました。公式の紹介文が春を「両さん顔負けの暴れん坊」と書いている以上、春は両さんと互角にぶつかる役として描かれている、と読むのが自然です。
だから「両さんが負け役になる」という批判は、裏返せば設定どおりに機能している証拠でもある。そこが合うかどうかは、両さんに何を期待して読んでいるか次第です。
なお、作者が大阪の回を始めた狙いを語った資料は、筆者が調べた範囲では見つかりませんでした。「なぜ大阪だったのか」は、ここでは断定しません。
本音のところ、筆者はこう思う
わかる、あれはね…。両さんが大阪で言い負かされて終わる回は、正直モヤっとします。通天閣署が亀有の隣にやって来たときも、筆者は「ホームを取られた」ような気分になりました。大阪の回をつまらないと感じる人の気持ちは、ちゃんと分かるつもりです。
でも、40年続いた作品が、連載開始から30年近くたったところで、亀有の外に新しい舞台をつくった。これ自体はかなりの挑戦だったと思うんです。路地の串かつ屋、変人ぞろいの署、東京への対抗心。どれも亀有にはない色でした。
だから「つまらない」も「嫌い」も「好き」も、どれも作品をちゃんと読んだ人の感想です。どっちが正解という話ではありません。どう感じるかは読者次第、そこは開いておきたいと思います。
それでもこち亀の大阪回が面白い理由
こち亀の大阪が「つまらない」と言われる理由は、東京との比較のくり返し、両さんの負け役化、誇張された大阪人像、そして後期への不満との結びつきの4つ。どれも読者の実感から出た声です。
でもね、両さんと真正面から張り合える春がいるから、こち亀の大阪回は面白いんだ。気になった人は、まず140巻の「通天閣署・御堂春登場!!の巻」から、自分の目で確かめてみてください。
辛口で締めるつもりが、目次を追ううちに春の実家の串かつ屋が気になって、143巻を読み返していました。次は「隣の大阪さん」の回だけで一本書きたい…いや、今日はここまでにします。
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