ニセコイはなぜひどいと言われる?最終回・結末の賛否と理由

で、本音のところ、どうなの? 『ニセコイ』と検索すると「ひどい」という言葉が出てきて、気になった人は多いと思います。正直に言うと、その声には理由があります。ただ結論から言えば、ニセコイが「ひどい」と言われる正体は、単に作品が雑だったことではありません。約4年9カ月の連載で読者が積み上げた期待と、結末の選び方とのズレです。原作漫画に絞って、論点を3つに分けて本音で整理します。

【ネタバレ注意】本記事には『ニセコイ』の結末(最終回で誰と結ばれるか、「約束の女の子」の正体)のネタバレが含まれます。未読の方はご注意ください。

なぜ「引き延ばし」と言われるのか?

まず前提から。『ニセコイ』は古味直志先生のラブコメで、週刊少年ジャンプで2011年48号から2016年36・37合併号まで連載されました。全229話、単行本は全25巻。2016年8月8日発売の号で最終回を迎え、約4年9カ月の連載に幕を下ろしています。完結時点で、ジャンプのラブコメとしては史上最長の連載でした。

物語のエンジンは「10年前の約束」です。主人公の一条楽は、幼いころに結婚を約束した女の子からもらった、鍵穴つきのペンダントを持っている。ところが、対になる鍵を持つ女の子が一人ではなかった。桐崎千棘、小野寺小咲、橘万里花、さらに楽の幼なじみの奏倉羽まで、鍵の持ち主は最終的に4人になります。

ぶっちゃけ、ここが「引き延ばし」と言われる一番の理由だと思います。鍵を持つ子が増えるたびに、答えは先送りになる。しかも楽と小咲は中学時代から両想いなのに、告白しかけるたびに邪魔が入る展開が何度も繰り返されました。

実際、電子書籍ストア「めちゃコミック」のレビュー欄でも、中盤からの「引き伸ばし」を残念な点に挙げる声があります。本筋が進まない回が続くと、毎週追っている読者ほど焦れる。その気持ちは分かります。

ただ、ラブコメの場合、本筋が進まない回こそが本体だったりします。キャラ同士の掛け合いを楽しむ1話完結の回が支持されたからこそ、長期連載になったとも言えます。コミックスの累計発行部数は1200万部以上(2018年時点)です。「引き延ばし」と「長く愛された」は、同じ事実の表と裏なんです。

結局、「約束の女の子」は何だったのか?

ここが「ニセコイ ひどい」と検索される核心です。結論から言うと、10年前に楽と結婚を約束した「約束の女の子」は小野寺小咲でした。そして楽が選んだのは、桐崎千棘です。

終盤、小咲は楽に想いを打ち明けます。楽も小咲を好きだったことを認めたうえで、いまの気持ちは別の相手に向いていると答える。小咲は大切にしてきた鍵を楽に託し、楽はペンダントを開けて、約束の相手が小咲だったことを思い出します。それでも、楽の気持ちは変わりませんでした。

楽のペンダントと小咲の鍵は、楽・千棘・小咲の3人で、10年前に約束を交わした場所に埋められます。200話以上かけて引っ張った約束が、最後は「決め手」にならなかったわけです。

わかる、あれはね…モヤモヤするのは当然です。アニメ!アニメ!が2020年に行った読者アンケート「失恋したアニメキャラといえば?」では小咲が3位に入り、「最初は両想いだったのに、最終的には付き合わなかったところが切ない!」という声が寄せられていました。約束の相手で、しかも両想い。それで選ばれないのは、小咲を応援してきた読者にはつらい。

一方で、作品のタイトルは『ニセコイ』です。偽物の恋人関係から始まった二人が、本物になるまでを描く話だった。最終回では、楽と千棘が二人で新しく作ったペンダントと鍵で永遠の愛を誓います。過去の約束を埋めて、いまの二人で約束を作り直す。結末の向きそのものは、第1話から一貫していたとも言えます。

じゃあ「ひどい」という評価は妥当なのか?

正直に言うと、半分は妥当だと思っています。

妥当なのは「着地までの運び方」です。中盤は答えが先送りされ続け、終盤は千棘の休学と渡米、天駒高原での告白、数年後の後日談までが一気に描かれました。万里花も、病弱な体の治療のために物語の中心から離れ、終盤は千棘の背中を押す役回りで戻ってくる形でした。先ほどのレビュー欄にも「ラストは妥当だが『巻き』がミエミエ」と、橘や小野寺の扱いを惜しむ声があります。

ただ、見落とされがちなポイントがあります。そのレビュー自体が「ラストは妥当」と書いているように、不満の矛先が「誰と結ばれたか」より「どう結んだか」に向いている声もある。行き先ではなく、道のりの問題というわけです。

数字でも見ておきます。同じレビュー欄の評価(全279件、2026年10月20日時点)は平均★3.5。★4以上が約5割、★3が約3割、★2以下は2割弱でした。「ひどい」が多数派というより、賛否が割れている作品と見るのが実態に近いと思います。

論点 妥当だと思う部分 言い過ぎだと思う部分
中盤の引き延ばし 鍵の持ち主が増え、答えが先送りされ続けた 1話完結の掛け合いが支持されたから長く続いた
約束の女の子の扱い 約束の相手が選ばれず、肩透かしに感じやすい 過去の約束より今の気持ちを選ぶ結末はタイトルと一貫している
終盤の駆け足 ヒロインたちの決着が短い話数に詰め込まれた 結ばれた相手そのものは「妥当」と見る声もある

本音のところ

筆者の答えを先に言うと、『ニセコイ』は「ひどい」作品ではなく、「期待を背負いすぎた」作品だと思っています。

4年9カ月、毎週「約束の女の子は誰なのか」を考えながら読んでいた人にとって、約束が決め手にならない結末は肩透かしに映る。小咲を応援していた人なら、なおさらです。その悔しさを「ひどい」という言葉で吐き出したくなる気持ちは分かります。

でも、偽物の関係から始まった恋が本物になる物語として見れば、千棘を選ぶ結末は筋が通っています。問題があったとすれば行き先ではなく、そこに至るまでのペース配分。筆者はそう整理しています。

もちろん、小咲と結ばれてほしかったという気持ちも、正しい読み方のひとつです。どちらの受け取り方も間違いではありません。どう感じるかは読者次第です。

それでも『ニセコイ』が面白い理由

でもね、これがあるから『ニセコイ』は面白いんだと思うんです。

読者が「誰と結ばれるか」に本気で一喜一憂できたのは、どのヒロインにも幸せになってほしいと思わせる魅力があったから。2026年9月には連載15周年の記念ショップが開かれ、古味先生が千棘、小咲、誠士郎、万里花、るりのドレス姿を描き下ろしています。完結から10年たっても、みんな並んで愛されている。

「ひどい」と言われるほど、読者の心を本気で動かしたラブコメ。それが『ニセコイ』だと思います。


書きながら「小咲はなぜ選ばれなかったのか」「万里花の終盤をどう読むか」と派生ネタが止まらず、下書きが3本増えました。辛口で締めたかったのに、結局ヒロイン全員の幸せを願って終わっています。

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