ミスフルはなぜ打ち切りと言われる?理由と終わり方の賛否

で、本音のところ、どうなの? 「ミスフルって打ち切りだったんでしょ?」という話、今でもときどき耳にします。

ぶっちゃけ、そう言われる理由は分かります。ただ、確認できる範囲では打ち切りという公式発表はありません。事実と印象を分けて整理していきます。

※本記事は県予選・県対抗総力戦の結末と最終盤の展開に触れます。未読の方はご注意ください。

で、ミスフルは実際どう終わったの?

まずは事実から押さえます。『Mr.FULLSWING』は鈴木信也先生の野球ギャグ漫画で、週刊少年ジャンプ(集英社)で2001年23号から2006年23号まで連載されました。単行本はジャンプ・コミックス全24巻、全227話です。

項目 内容
連載誌・期間 週刊少年ジャンプ 2001年23号〜2006年23号(約5年)
巻数・話数 ジャンプ・コミックス 全24巻・全227話
最終巻 24巻「同じ空の下で」
県予選の結果 十二支高校は準決勝でセブンブリッジ学院に敗退
終盤の舞台 全国高校野球 県対抗総力戦(埼玉選抜として出場)
TVアニメ化 されていない(ドラマCDは3作発売)
文庫版 2011年に刊行開始、全15巻。描き下ろし漫画を毎巻収録

流れをざっくり言うと、主人公・猿野天国たちの十二支高校は、夏の甲子園をかけた県予選の準決勝でセブンブリッジに敗れます。県予選を制した華武高校も、甲子園の初戦で大阪代表の豊臣高校に敗れました。

その後の物語は、各県の選手を集めた「県対抗総力戦」へ移ります。天国は埼玉選抜の一員として戦い、決勝では実の兄・雉子村黄泉と激突。黄泉は敗れ、父の九泉とともにアメリカへ戻っていきます。そして最後に、天国たちの2年後の姿が描かれて幕を閉じます。

なお、2006年23号は連載5周年の号で、同じ号で完結しています。

なぜ「ミスフルは打ち切り」と言われるのか?

結論から言うと、「打ち切りっぽく見える要素」が終盤に重なったから、だと筆者は見ています。理由は大きく4つです。

1つ目は、十二支高校として甲子園に行けなかったことです。物語の出発点は、20年前に甲子園3連覇を果たした名門・十二支の「止まった時計」を動かすことでした。その十二支が県予選の準決勝で終わる。読者が一番見たかったゴールに届かなかったので、「途中で畳んだのでは」と感じやすいんです。

2つ目は、終盤に大会の枠組みそのものが変わったことです。県予選が終わったあと、学校の垣根を越えた選抜チームの大会に移りました。オールスター戦のような熱さはある一方で、「十二支の物語」を追っていた人ほど、別の話が始まったように見えたかもしれません。

3つ目は、2年後へ一気に飛ぶ締め方です。ジャンプ作品では、残りの物語を描かずに数年後のエピローグで終える形が「打ち切りの合図」と受け取られがちです。ミスフルもこの型に当てはまるため、印象で語られやすいのだと思います。

4つ目は、作風の変化です。序盤〜中盤は「ギャグ漫画のついでに野球をしている」と言われるほどギャグ中心でしたが、終盤はほぼシリアスな野球一色になり、最終24巻にはギャグらしいギャグがほとんどありません。ギャグ目当てで読んでいた人には、別作品のように映ったはずです。

さらに言えば、20巻を超えたジャンプ作品なのにTVアニメ化されていないことも、「人気が足りなかったのでは」という連想を呼んでいる面があります。

じゃあ「打ち切り説」は妥当なのか?

わかる、あれはね…気持ちは分かるんですが、断定できる材料はありません。逆に、打ち切り説だけでは説明しきれない点もはっきりあります。

まず、連載の長さです。約5年・全227話・全24巻。週刊少年ジャンプでこれだけ続いた作品を、短期で終わった作品と同じ意味で「打ち切り」と呼ぶのは無理があります。

次に、物語の芯はきちんと回収されています。天国は凪に告白して結ばれ、兄・黄泉との因縁にも決着がつきます。十二支としての甲子園は描かれなかったものの、天国個人の物語は「終わらせた」形になっています。

そして、作者自身の言葉です。文庫版刊行時のコミックナタリーのインタビュー(2011年)で、鈴木先生はミスフルを「紆余曲折ありましたけど一度完結しているマンガ」と語っています。また同インタビューでは、新人につきまとう「10週打ち切りの壁」に触れ、ミスフルを連載した5年は「その緊張感がずっと続いていてギリギリのところでやっていけたような感じ」だったと振り返っています。

つまり、人気競争のプレッシャーの中で描き続けた作品であることは作者も認めています。ただ、終わり方が編集部の判断だったのか、構想どおりだったのかについて、公式に説明された情報は確認できませんでした。終盤の展開がどこまで当初の予定どおりだったかは、あくまで読者の推測の域を出ません。

本音のところ

正直に言うと、私も十二支で甲子園のマウンドに立つ天国を見たかった派です。そこが描かれなかった物足りなさは、ファンなら誰でも少しは抱えていると思います。

でも、県予選で負けたこと自体はミスフルらしい選択だったとも感じます。天国は野球未経験の素人から始まった選手です。トントン拍子に甲子園優勝まで行ったら、それこそ嘘っぽくなる。負けを経験して、選抜で兄と向き合う流れは、彼の物語としては筋が通っています。

同じインタビューで先生は「ジャンプで野球モノって、やっぱり難しい」とも話していました。その難しさの中で5年走り切った作品を、「打ち切り」の一言で片付けるのはもったいない。どう受け取るかは読者次第ですが、筆者はそう思います。

それでもミスフルが面白い理由

ミスフルのいちばんの良さは、全力でふざけるギャグと、物理法則を無視したトンデモ技を本気でぶつけ合う野球が、同じ熱量で共存していたことです。笑わせた分だけ、終盤のシリアスな試合が胸に刺さる。

連載終了から5年後の2011年には、毎巻描き下ろし漫画付きの文庫版の刊行が始まり、全15巻で出そろいました。それだけ待っていた読者がいたということです。終わり方に賛否はあっても、ミスフルが愛された作品であることは間違いありません。


辛口で切り込むつもりが、気づけば子津くんの努力の話まで書きたくなっていました。次は華武戦の話もいけそうです。

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