【HUNTER×HUNTER】ヒソカ=モロウという純粋な狂気。なぜ彼は読者をここまで魅了するのか?

少年漫画には数多くの「ヤバい奴」が登場します。

しかし、その中でも一際異彩を放ち、読者の脳裏にその歪んだ笑顔を焼き付けて離さない男がいます。

そう、『HUNTER×HUNTER』に登場する奇術師、ヒソカ=モロウです。

「そんな目で見つめるなよ♠︎ 興奮しちゃうじゃないか…♥︎」

彼のこのセリフに、多くの読者が戦慄と同時に奇妙な魅力を感じたのではないでしょうか。

今回は、単なる「戦闘狂」や「変態」という言葉では決して片付けられない、ヒソカというキャラクターの底知れぬ魅力の正体に迫ってみたいと思います。

強者との「愛」を求める、歪んだ戦闘美学

ヒソカを語る上で欠かせないのが、その常軌を逸した戦闘への渇望です。

しかし、彼はただ強い相手と戦いたいだけの脳筋キャラとは一線を画します。

彼の興味は、才能ある強者を「玩具(オモチャ)」と見なし、その成長を心待ちにし、最高の状態になった瞬間を自らの手で「壊(愛)す」ことにあります。

獲物は熟すまで待つ「育成フェチ」

ハンター試験で出会ったゴンとキルア。

ヒソカは彼らの計り知れない才能に目をつけ、自らの最高の「玩具」と認定しました。

普通なら、邪魔な存在は早い段階で潰しておくのがセオリーでしょう。

しかしヒソカは、彼らが危険に陥れば一時的に助けることさえします。

全ては、いつか成長した彼らを心ゆくまで味わい尽くすため。

成長した獲物を狩ることを想像しては下腹部が反応する姿は、まさに筋金入りのサイコパス。

この「待つ」という美学こそ、ヒソカを唯一無二の存在たらしめているのかもしれません。

無価値な者への「無関心」という名の残忍さ

一方で、ヒソカが「見込みなし」と判断した者への態度は、驚くほど冷酷で無関心です。

暇つぶしや八つ当たりで人を殺すことに、彼は何の感慨も抱きません。

この極端な二面性こそが、彼の狂気をより一層際立たせています。

彼にとって世界は、価値ある「玩具」と、それ以外の「どうでもいい石ころ」で構成されているのでしょう。

そう考えると、キメラアント編で彼が全く登場しなかったのも頷けます。

彼の独白によれば、キメラアントは「人ではない」ため、そもそも狩りの対象外。

彼が求めるのは、単純な殺戮ではなく、人間同士の思考や感情が交錯する「戦(バトル)は舞(ダンス)」なのですから。

道化の仮面に隠された、恐るべき「クレバーさ」

奇抜なメイクと変態的な言動に隠れがちですが、ヒソカの真の恐ろしさはその頭脳にあります。

彼は決して無謀な戦いは仕掛けず、常に状況を冷静に分析し、勝利への最短ルートを導き出す生粋のギャンブラーです。

攻撃力ゼロ? 念能力の本質

ヒソカの念能力は、彼の性格を実によく表しています。

  • 伸縮自在の愛(バンジーガム): オーラをガムとゴムの性質に変える。
  • 薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー): オーラであらゆる質感を再現する、いわばオーラのシール。

驚くべきことに、どちらも直接的な攻撃能力は皆無です。

しかし、ヒソカの卓越した格闘センスとバトルIQが組み合わさることで、これらの能力は無限の応用力を発揮します。

相手を騙し、翻弄し、じわじわと自分のペースに引きずり込む。

これは、強力な一撃必殺技に頼るのではなく、基礎能力と知略で戦う彼のスタイルそのもの。

能力が相手にバレてもほとんど問題ない、というシンプルさも彼の自信の表れと言えるでしょう。

意外と常識人なギャップ萌え?

そんなイカれた彼ですが、時折見せる人間臭い一面も魅力の一つです。

ハンターとしての招集には律儀に応じたり、結んだ契約はきちんと守ったり。

G.I編では暇つぶしに恋愛都市でイベントを楽しむなど、意外と俗っぽいところもあります。

この予測不能な言動の振り幅が、「ヒソカならやりかねない」という期待感と恐怖を読者に与え、目が離せなくさせるのではないでしょうか。

死すらも玩具に。そしてネットミームへ…

ヒソカの狂気が頂点に達したのが、幻影旅団団長クロロ=ルシルフルとの決闘です。

周到に準備を重ねたクロロの前に、ヒソカは敗北し、一度は心肺停止に至ります。

死からの復活、そして復讐の宣戦布告

しかし、彼は死の直前、自らの念に「死後、蘇って心臓と肺を愛撫(マッサージ)せよ」というトンデモない命令を下していました。

死後強まる念によって蘇生するという、前代未聞の復活劇。

この展開には、多くの読者が度肝を抜かれたはずです。

そして彼は宣言します。「闘う時、相手と場所を選ばない事にした♣」と。

これは、タイマンにこだわっていた彼が、ルール無用の皆殺しモードへと移行した瞬間でした。

即座にシャルナークとコルトピを惨殺したシーンは、ヒソカの新たなステージの幕開けを強烈に印象付けました。

なぜ「ヒソカコラ」は流行ったのか

ヒソカを語る上で「コラ画像」の文化は外せません。

特にキメラアント編で長期にわたり出番がなかったことから、ネット上では様々なコラ画像が生まれました。

中でも有名なのが、イルミとの会話を改変したこのセリフでしょう。

ヒソカ「冗談だよぉ…殺気(気配)…もれてるケド…… 大丈夫…?」ビクッ

原作の余裕綽々な態度とは真逆の、汗をかき、困り顔でビクつくヒソカ。

このコラは、キメラアント編の圧倒的な戦力のインフレを前に、「あのヒソカですらビビるのでは?」というファンの愛憎入り混じった想像が生み出した、一種の二次創作と言えます。

あまりの完成度の高さに、一時期は原作のセリフだと勘違いする人も続出しました。

しまいには公式のLINEスタンプに採用されてしまう(後に修正)という珍事まで発生し、その影響力の大きさを物語っています。

もちろん、こうしたネタを不快に思うファンもいるので、取り扱いには注意が必要ですが、これもまたヒソカというキャラクターがどれだけ愛されているかの裏返しなのかもしれません。

結論:ヒソカは『HUNTER×HUNTER』が生んだ最高の「バグ」

予測不能な言動、揺るぎない戦闘美学、そして死すらも超越する執念。

ヒソカ=モロウの魅力は、善悪や敵味方といった単純な物差しでは決して測れないところにあります。

彼は物語の都合などお構いなしに、ただ自らの欲望にのみ従って行動する、いわば物語における最高の「バグ」のような存在です。

だからこそ、私たちは彼の次の一手に常に釘付けにされ、心を掴まれてしまうのでしょう。

彼の狩りはまだ終わっていません。次なる「玩具」は誰なのか、そして彼はどんな「舞」を見せてくれるのか。

これからも、この最高にイカれた奇術師から目が離せそうにありませんね。

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