呪術廻戦 結末への賛否を本音で整理
- 2026.06.04
- 呪術廻戦
で、本音のところ、どうなの?『呪術廻戦』の最終回(本誌271話・最終巻30巻)の評価が、いまも賛否で割れているという話。SNSでも検索窓でも「呪術廻戦 最終回 ひどい」「五条悟 復活しなかった」と打ち込む人が後を絶たない。正直に言うと、その気持ちはわかる。今日はその違和感を、貶めず、ちゃんと整理してみる。
※本記事は最終回(271話)までの内容に触れます。未読の方はご注意ください。
で、最終回はなぜ「ひどい」と言われているのか
否定的な声を整理すると、論点は大きく3つに集約される。順に見ていく。
論点1:未回収の伏線が複数残った
ぶっちゃけ、これが一番大きい。虎杖の父の正体、虎杖が終盤で発動した領域展開の名称、宿儺・羂索という二大ラスボスの過去——どれも10巻以上の連載で積み重ねられた謎だ。これらが明確に説明されないまま物語が閉じたことに、「読者の宿題が多すぎる」という声が上がっている。
気持ちは分かる。10年近く追ってきた読者にとって、伏線回収は「ご褒美」みたいなものだから。ただ、芥見作品の特徴として「説明を引かないと話が走らなくなる」というスタイルがある点も、押さえておきたい。
論点2:五条悟が復活しなかった
これが二番目。連載中盤以降の最大人気キャラだった五条が、宿儺戦で真っ二つに分断されて死亡し、最終回までに復活も再登場もしなかった。連載中、ファンの間では「復活フラグ」がさかんに議論されていたぶん、肩透かしを食らった人は少なくない。
わかる、あれはね……五条というキャラは作品の「象徴」だったから、最終回でもう一度顔を見たかったという要望は当然あった。データで言えば、最終回直後のSNS上「五条」関連投稿は、最終話前週比で大きく跳ねている(賛否どちらの方向にも)。それだけ感情を動かした、ということでもある。
論点3:「描かれない余白」を読者に委ねる作風
三番目は、最終回そのものの語り口の問題だ。最終回は静かな後日談として閉じられ、宿儺戦の決着以後の世界がどう変わったかについて、明示的な描写は少ない。読者は「余白」から多くを読み取らなければならない。
なぜ叩かれるのかと言えば、ジャンプ作品の最終回には「全部見せて締める」古典的な型を期待する層が一定数いるからだ。それと『呪術廻戦』終盤の語り口は、明らかにズレている。期待値とのギャップが、評価の落差を生んでいる。
気になる人にとってさらにモヤるのが、本作が連載中盤までは「説明過多」と言われるほど用語と能力を細かく解説してきた点だ。死滅回游のルール、領域展開の理論、術式のメカニクス——いずれも作中で丁寧に言語化されていた。それと比較すると、終盤〜最終回の説明の引き方は同じ作者の作品とは思えないほどシフトしている。「途中で方針が変わった」と感じる読者がいるのは、ある意味自然な反応である。
じゃあ批判は妥当なのか
「妥当だが、全部ではない」というのが本音だ。理由を3つに分けて述べる。
- 伏線未回収への批判は妥当。ただし、回収しようとすれば最終巻が30巻では終わらなかったはず。芥見作者があえて畳まなかった選択である可能性が高い。
- 五条復活を期待した側の感情も妥当。ただし、復活させてしまうと「彼の死で物語が前に進む」という終盤の構造そのものが壊れる。物語論的には復活させないほうが筋が通る。
- 余白を残す作風への違和感も妥当。ただし、これは作品全体の語り口の延長であり、最終回だけが特異だったわけではない。中盤からその傾向は強まっていた。
つまり「期待のフォーマットがずれていた」という現象として読むと、賛否どちらの言い分にも筋が通っている。
本音のところ
個人的に言えば、最終回そのものが「ひどい」と切って捨てるのは違うと思っている。たしかに未回収はある。たしかに五条は戻ってこない。たしかに余白は大きい。それでも、最終回で五条の意志が「強く聡い仲間たち」に確かに引き継がれて閉じる絵には、作品全体を貫いてきたテーマとしての筋がある。
同時に、「期待していた終わり方ではなかった」という読者の感情も貶めるべきではない。10年近く伴走した作品の終わり方に違和感を持つこと自体が、その作品を本気で読んできた証拠だからだ。どっちの言い分もわかる、というのが本音である。最終的にどう感じるかは、読者それぞれの読み筋次第だ。
それでも『呪術廻戦』が面白い理由
でもね、これだけ最終回が議論される作品は、そう多くない。「ひどい」と言いながら最終巻まで買って読んだ人がこれだけいるという事実こそが、『呪術廻戦』が時代を作った作品である何よりの証拠だ。賛否が割れるのは、誰もが本気で考えたから。
渋谷事変、死滅回游、宿儺戦——それぞれの長編で、本作は「いま少年漫画で何ができるか」を更新し続けてきた。最終回の評価がどうであれ、その更新の積み重ねは確かに残っている。だから、最終回の評価に納得いかない人ほど、もう一度全巻を読み返してみてほしい。中盤の伏線が終盤でどう機能しているか、五条の死が物語にどう作用しているか——再読することでしか見えない構造が、この作品にはたっぷり残っている。納得いかなさも含めて、長くつき合える作品だと思う。
ちなみに最終巻を読んだ翌日、思わず1巻を引っ張り出してきて読み返した。賛否は別として、これだけ「再読したくなる最終回」を書けるのはやっぱり凄い作家だと思う。
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