ONE OUTS 渡久地のやり方は卑怯?賛否を本音で整理

で、本音のところ、どうなの?――野球漫画『ONE OUTS』を読むと、たいていの人が一度はこう思います。「渡久地のやり方、これって卑怯じゃないの?」と。正直に言うと、その引っかかりはすごくよくわかります。だって彼がやるのは、剛速球でねじ伏せる正攻法ではなく、相手の心理を読んで、揺さぶって、ハメる戦い方ですから。でもその「卑怯っぽさ」こそが、この作品が長く語り継がれている理由でもあるんです。賛否の両方を、本音でフラットに整理してみます。

そもそも渡久地のやり方って、具体的に何が「卑怯」って言われてるの?

まず前提を揃えておきます。主人公の渡久地東亜(とくち とうあ)は、球速が100〜120km/h台しか出ない、いわゆる「遅球」のピッチャーです。普通の野球漫画なら主人公にならないタイプですよね。

じゃあ何で勝つのか。リリース直前に球の回転を変える技巧と、何より「心理戦」と「情報戦」です。打者が何を待っているか、ベンチが何を考えているかを読み切って、その裏をかく。沖縄の「ワンナウツ」賭博で499勝無敗だった、勝負師としての読みがベースになっています。

ここで「卑怯」と感じる人のポイントは、だいたい3つに分かれます。

1つ目は、相手を「ダマす」ことが勝因の中心だから。実力で押し勝つのではなく、相手のミスや思い込みを誘発して勝つ場面が多い。2つ目は、ルールのグレーゾーンや盤外戦術に踏み込むこと。3つ目は、味方であるはずのチームオーナーすら出し抜く、その容赦のなさです。

気持ちは分かります。スポーツに期待する「正々堂々」とは、たしかにベクトルが違うんですよね。

なぜ「卑怯」じゃなくて「頭脳戦の魅力」だと感じる人が多いのか?

一方で、「いやこれは卑怯じゃない、むしろ痛快だ」という声も同じくらい根強い。こっちの言い分も、わかる、あれはね…という感じで筋が通っています。

大きな理由は、渡久地が踏んでいるのが基本的に「ルールの内側」だという点です。彼の武器は反則ではなく、観察・分析・駆け引き。野球というゲームに用意された情報や心理の余白を、誰よりも徹底的に使っているだけ、という見方です。

もう1つは、彼が背負っているハンデ。先ほど触れたとおり球が遅い。普通なら通用しない条件で、頭脳だけで超一流と渡り合う。この「持たざる者が知恵で勝つ」構図に、多くの読者がカタルシスを感じます。

そして見落とされがちなのが、渡久地が戦っている相手は対戦チームだけじゃないこと。彼は所属球団のオーナーと「ワンナウツ契約」を結んでいます。1アウト取るごとに球団から500万円を受け取り、逆に1失点するごとにオーナーへ5000万円を支払うという、自分にとって異常にリスクの高い契約です。つまり彼は、自分を陥れようとするオーナーの妨害をも頭脳でかいくぐらないと、破滅する立場にいる。この「追い詰められた側の知恵比べ」だからこそ、ハメる戦法が嫌味に見えにくいんです。

じゃあ結局、批判する人の言い分はおかしいの?

ここははっきりさせておきたいんですが、「卑怯派」の言い分も決しておかしくありません。両方フェアに置きます。

実際、この作品には昔から「心理戦と言うわりに、驚く役とダマされる役がはっきり決まりすぎ」という指摘があります。渡久地が常に一枚上手で、相手が都合よく引っかかってくれる――そう感じる瞬間があるのは事実で、ここを「ご都合主義」と取るか「様式美」と取るかで評価が割れます。

もう1つ、彼の戦術が時に倫理的にかなりきわどい領域へ踏み込む点も賛否の火種です。ここは具体的な勝負の中身に触れるとネタバレになるので伏せますが、「さすがにそれはやりすぎでは」と読者がツッコミたくなる場面が用意されている。つまり作者自身が、渡久地を完璧な聖人としては描いていないんですね。

逆に言うと、「卑怯か頭脳戦か」という問い自体が、作品が意図的に仕掛けた論点なんだと思います。きれいな主人公ではなく、危うさを残したアンチヒーロー。だから読者の感想が割れる。割れること自体が、この作品の設計通りなんです。

本音のところ、筆者はどう見ているか

正直に言うと、筆者は「卑怯」と「頭脳戦」は対立しないと思っています。渡久地のやり方が嫌だと感じる感性も、痛快だと感じる感性も、どちらも作品をちゃんと受け取った結果だからです。

個人的に唸ったのは、渡久地が相手を打ち負かす瞬間より、「負けたら自分が破滅する」契約を背負ったまま、それでも淡々と盤面を組み立てていく胆力のほうです。ハメる戦法は手段であって、本質は極限のプレッシャー下での冷静さ。そこに痺れる人は、たぶん「卑怯」という言葉では片づけないと思います。

とはいえ、ぶっちゃけ筆者も最初に読んだときは「いやこれズルくない?」と何度かページを止めました。その引っかかりを否定する気はありません。どう感じるかは、読む人次第でいい。そういう余白がある作品だと思っています。

それでもONE OUTSが面白い、これだけは言いたい理由

でもね、これがあるから『ONE OUTS』は面白いんだ、という一点だけは譲れません。

遅球の主人公が、心理と情報だけで超一流を出し抜く。その「頭で勝つ」快感は、ほかの王道スポーツ漫画では絶対に味わえない種類のものです。卑怯に見えるギリギリの綱渡りこそが、この作品の心臓部なんですよね。アニメも全25話で渡久地の魅力がしっかり描かれているので、賛否どちらの立場の人にも、一度は自分の目で「これは卑怯か、知恵か」を確かめてほしい。きっと、答えが出ないまま夢中になっているはずです。


辛口に整理するつもりが、書いてるうちに「契約の重圧」のくだりで完全に渡久地擁護になってました。ダメだ、この男のことになると毎回こうなる。次は彩京リカオンズの他の選手についても本音で書きたくて、もう下書きが3本くらい頭の中にあります。

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