【Dr.STONE】はエセ科学?作中の「ありえない」「無理がある」と言われる科学技術を徹底検証!

『Dr.STONE』、面白いですよね。石化から目覚めた天才高校生・石神千空が、科学の力で文明を取り戻していく。

ゼロから電気を作り、鉄を作り、ついにはスマホまで作ってしまう。その怒涛のクラフト展開には、理系文系問わずワクワクさせられます。

ただ、同時にこうも思うわけです。「いや、さすがに無理じゃね?」と。

ネットの掲示板を覗けば、「ご都合主義すぎる」「エセ科学だ」なんて辛辣な批判も飛び交っています。

ところが、文部科学省や国立科学博物館といった”お堅い”機関は公式にコラボし、作品を大絶賛。

一体どういうことなのか。この作品はガチの科学なのか、それとも科学の皮を被ったファンタジーなのか。

今日はこの長年の論争に、俺なりの結論を出してみたいと思います。

「さすがに無理だろ」ツッコミどころトップ3

まず、俺たち視聴者が「ん?」となるポイントを整理してみましょう。

特に批判の的になりやすいのが、あの驚異的な開発スピードです。

1.スマホ、作るの早すぎ問題

作中で最も「ありえない」と指摘されるのが、携帯電話の製作です。

千空たちは、原始的な環境からスタートして、比較的あっさりと真空管式の無線機を完成させます。

しかし、専門家のガチな意見によると、これは「10年から30年はかかる巨大プロジェクト」なんだとか。

真空管一つ作るのだって、タングステンの精密加工やら、高度な真空技術やら、ガラスの気密性確保やら、現代の工場でも大変な技術の塊。

それを石の世界でやるのは、「ステップ数が一ミリも想像がつかない」レベルの無理ゲーらしいです。

「数日で携帯電話を作る」という描写は、もはやファンタジーの域と言わざるを得ません。

2.サルファ剤、そんなに都合よく作れる?

次に、コハクの姉・ルリを救った万能薬サルファ剤。

これも、科学監修のくられ氏自身が「結構な時間が要るはず」とコメントしています。

製造プロセス自体は可能だとしても、問題は品質管理。

不純物が混じったり、そもそも違う物質ができてしまったりするリスクがデカすぎる。

専門家からは「生成物の確認が困難で、患者を先に亡くならせてしまいそう」なんて、身も蓋もない指摘がされています。

それに、サルファ剤が効く肺炎菌は一部だけ、という現実的な問題も。作中のようにピンポイントで特効薬になるのは、かなりの幸運が必要です。

3.時間スケール、完全にバグってない?

結局のところ、最大の矛盾は「時間」なんです。

「科学史200万年を駆け上がる」というキャッチフレーズは最高にクールですが、駆け上がりすぎです。

現実の科学技術は、地味な試行錯誤の繰り返し。一つの技術を確立するのに、何世代もの時間がかかっています。

工場や精製設備といったインフラ整備の時間を完全に無視して、ポンポンと新アイテムを生み出す千空は、もはや魔法使いの領域です。

制作陣は「わかっててやってる」確信犯だった

さて、ここまでのツッコミは、多くの視聴者が一度は感じたことでしょう。

では、制作陣はそれに気づいていないのか? いえ、そんなはずはありません。彼らは全てを理解した上で、あえてやっているのです。

原作者・稲垣先生の「正直な告白」

原作者の稲垣理一郎先生は、インタビューでこう語っています。

少年漫画的な演出やハッタリのために『いやここはウソでいきます!』ってする箇所も、当然あります

そう、認めているんです。面白さのためなら、科学的な正確性を曲げることもある、と。

これこそが、この作品の核となるスタンスではないでしょうか。

さらに興味深いのは、安全性への配慮です。

稲垣先生は、危険な実験が安易に真似されないよう、「一個肝心な手順を描かない」ことが多いと明かしています。

例えば、序盤の黒色火薬の作り方。作中通りにやっても、まともなものは絶対にできないように、意図的に重要なプロセスを”カメラの外”でやらせているのです。

これはただのファンタジー作家にはできない、科学への深いリスペクトと責任感の表れと言えるでしょう。

科学監修・くられ氏の絶妙なバランス感覚

科学監修のくられ氏も、その役割を「作家からの要望に対して可能な限り寄り添う」ことだと説明しています。

つまり、「どうしたら原始世界で科学的にありえるか」というリアル路線と、「こういう展開にしたい」という物語の都合を、ギリギリのラインで両立させるのが彼の仕事なのです。

決して「100%科学的に正しい物語」を目指しているわけではない。この点が、批判と擁護のすれ違いを生む原因なのかもしれません。

ネット論争から見える「許容範囲」の境界線

この「リアルとフィクションのバランス」を巡って、ネット上では日夜激しい議論が繰り広げられています。

Yahoo知恵袋では「『100億%』とかいう非科学的なセリフが無理」という意見もあれば、5ch(旧2ch)ではこんな意見も。

70%リアルくらいに考えて良い

これ、個人的にはすごくしっくりくる表現です。

100%リアルな科学ドキュメンタリーだったら、少年漫画としてここまでヒットしなかったでしょう。

海外のファンコミュニティRedditでは、本作は「anime MythBusters(アニメ版怪しい伝説)」と呼ばれているそうです。

つまり、「理論上は可能だけど、実際やるのは無茶だよね」というネタとして楽しんでいるわけです。この距離感が、一番健全な楽しみ方なのかもしれません。

なぜ、国の機関は『Dr.STONE』を絶賛するのか?

さて、俺たちオタクが「無理じゃね?」とツッコミながら楽しんでいる一方、なぜ文科省や国立科学博物館は手放しでこの作品を評価するのでしょうか。

答えはシンプル。彼らが重視しているのは「科学的な正確性」よりも「教育的価値」だからです。

実際に、東大生が選ぶ「勉強になるアニメ」で第2位に輝き、「化学や物理の勉強になる」と絶賛されています。

「Dr.STONEを読んで理科が好きになった」「元素記号を覚えた」という子供たちの声も後を絶ちません。

人気科学系YouTuberの市岡元気先生も「ワクワクしながら科学を知れる最強の科学漫画」と太鼓判を押しています。

つまり、この作品の最大の功績は、科学の面白さへの「入口」になったこと。

スマホ作りの時間スケールが非現実的でも、そこに至るまでの化学反応や物理法則の「基本原理」は、驚くほど正確に描かれています。

その原理に興味を持った子供たちが、未来の科学者になるかもしれない。国家機関が評価しているのは、まさにこの点なのです。

結論:俺たちは「最高の嘘」に熱狂していた

長々と語ってきましたが、結論です。

『Dr.STONE』は「エセ科学」なのでしょうか?

俺は、そうは思いません。これは「教育効果を最大限に高めた、極上の科学エンターテインメント」です。

実現に必要な時間やインフラ、品質管理といった超えられない壁を「物語の都合」という魔法で飛び越え、科学の最もエキサイティングな部分だけを抽出して見せてくれている。

それは「嘘」かもしれません。しかし、科学への興味とリスペクトを育む、最高の「嘘」ではないでしょうか。

5chで誰かが言った「70%リアル」という評価。これこそが、この作品の本質を見事に捉えています。

残りの30%のフィクションは、俺たちをワクワクさせるための、制作陣からの最高の贈り物なのです。

だから俺たちは、これからも「いや無理だろw」とツッコミを入れながら、千空のありえないスピードのクラフトに、胸を熱くし続ける。それでいいんだと思います。

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