【ハンターハンターの謎】15巻表紙の少女は誰なのか?「ビスケでは?」「ガチで怖い」などと話題

少年ジャンプの数ある名作の中でも、特に異質な空気を放つ『HUNTER×HUNTER』。

その中でも、ファンの間で「一番怖い」「トラウマ」と語り継がれる表紙があるのを、あなたはご存知でしょうか。

そう、単行本15巻の表紙です。

血に濡れたウサギのぬいぐるみを抱き、虚ろな目をしたゴスロリの少女。この少女が誰なのか、20年以上経った今もなお、公式な答えは示されていません。

今回は、この永続する謎の正体に、ネットの海に漂う考察の断片を拾い集めながら、深く、そして少しだけ薄暗く迫っていこうと思います。

可愛いのに、なぜこんなに怖いのか? 脳がバグる恐怖の正体

まず、この表紙がなぜこれほどまでに我々の心をざわつかせるのか。その核心から探ってみましょう。

描かれているのは、12〜14歳くらいに見える、華奢で儚げな少女。黒を基調としたゴスロリファッションに身を包んでいます。

しかし、その腕に抱かれているのは、およそ少女の持ち物とは思えない、おぞましいウサギのぬいぐるみ。

耳はちぎれ、口や耳からは赤黒い何かが滴っている…。これが血であることは、誰の目にも明らかです。

この表紙の恐怖の本質は、「認知的不協和」にあります。

…なんて言うと小難しく聞こえますが、要するに「可愛らしい少女」と「血生臭いぬいぐるみ」という、本来まったく相容れない要素が無理やり同居しているせいで、俺たちの脳がバグを起こしているわけです。

普通、ロリータファッションといえば可愛らしさの象徴。でも、この表紙では陰鬱さと暴力の気配をまとっている。

この強烈なギャップが、見る者に言いようのない不安感と違和感を植え付けます。

ネットの匿名掲示板では、当時のファンたちの生々しい反応が今も残っています。

「血まみれのぬいぐるみの意味は?」
「怖っ!ビスケか・・・確かにそう考えられるがオレは冨樫の趣味か気まぐれだと思う」
「本屋で15巻を手に取るのを躊躇した」

そう、多くの読者が「本当にこれ、ハンターハンターか?」と疑ったほどの衝撃。この困惑と好奇こそが、20年以上続く議論の始まりでした。

少女の正体を巡る候補者たち。仁義なき考察バトル

さて、本題です。この少女は一体、誰なのか。長きにわたるファンコミュニティの議論で、いくつかの有力な説が浮上しています。

【最有力】ビスケット=クルーガー説

まず、最も多くのファンに支持されているのが、ビスケ説です。

15巻は、ゴンとキルアがグリードアイランドでビスケと出会い、本格的な修行に入る巻。物語の中心人物が表紙を飾るのは、ごく自然なことです。

髪型や、フリルの多い服装の系統も、確かに少女姿のビスケと似ています。

冨樫先生が物語と全く無関係なキャラを表紙に描くことは稀だ、という前提に立てば、この説が最有力候補になるのは当然でしょう。

…しかし、多くのファンはこうも感じています。「いや、ビスケはこんな陰鬱じゃないだろ」と。

ファンからも「血に塗れたうさぎの人形を持っているあたりビスケの印象とは程遠い」という声が上がるように、彼女の持つ底抜けの明るさや、時折見せる少女趣味とは明らかに雰囲気が異なります。

もしかすると、これはビスケの持つ「本来の戦闘狂としての一面」や「57歳という年齢の裏に隠された闇」を表現したもの…と解釈することもできるかもしれませんが、少しこじつけが過ぎる気もしますね。

【対抗馬】アルカ=ゾルディック説

次に根強い人気を誇るのが、アルカ説です。

ご存知、キルアの妹であり、作中屈指のチート能力を持つ「ナニカ」を内に宿す少女。彼女がぬいぐるみ(人形)を愛好している点は、表紙の少女と共通しています。

「でも15巻の時点(2002年)でアルカは登場してないじゃん」と思いますよね?

しかし、ゾルディック家の子供たちの名前が「しりとり」になっているという法則は当時からファンの間で囁かれていました。

イルミ→ミルキ→キルア→?→カルト。このミッシングリンクとして、アルカの存在を冨樫先生が既に構想していた可能性は十分にあるわけです。

もしこれがアルカの原型だとしたら、その伏線の張り方はもはや鬼神の所業と言えるでしょう。

【ゴシップ枠】まさかの「冨樫の妻が描いた」説

さて、ここからは少しゲスい話になりますが、非常に興味深い説も存在します。

それは、この少女は冨樫先生の妻、つまり『美少女戦士セーラームーン』の作者である武内直子先生が描いたのではないか、という説です。

なんでも、2002年10月にセーラームーンの公式サイトで公開された下絵に、この少女と酷似したイラストがあり、「○○○のつもり…なのだが」と、キャラ名が伏せられていたという情報があるのです。

これが事実なら、夫婦合作という胸熱な展開。しかし、なぜ血まみれのウサギなのか…謎はさらに深まるばかりです。

物語の文脈から読み解く「血まみれウサギ」の意味

ここで一度、15巻の内容を思い出してみましょう。

意外と勘違いされがちですが、15巻は暗く重いヨークシン編の続きではありません。ゲーム世界が舞台のグリードアイランド編、その中盤にあたります。

収録されているのは、ゴンとキルアがビスケのもとで「念」の基礎を叩き込まれる、いわば平和な修行パート。

しかし、その裏では爆弾魔(ボマー)・ゲンスルー一味の暗躍が進み、幻影旅団も島に侵入するなど、不穏な空気が着実に満ちてきていました。

そう考えると、この表紙は一種の視覚的な伏線として機能しているのではないでしょうか。

表面的には平和な修行風景(ゴスロリの少女)。その裏に潜む血生臭い脅威(血まみれのウサギ)。

可愛らしい外見のビスケが、実はとんでもない実力者であることの暗示。あるいは、ゲーム感覚で進む冒険の裏で、実際に命のやり取りが行われているという現実の突きつけ。

この「表面と裏面の二重性」こそ、冨樫作品を貫くテーマであり、この表紙はそれを象徴的に表現している、と俺は考えています。

「汚い部分が好き」— 冨樫義博の哲学が生んだアート

冨樫先生は過去の対談で、自身の美学についてこう語っています。

「表面的な美よりも裏側の汚い部分を見ることに魅力を感じる」

この15巻の表紙は、まさにこの哲学を一枚の絵に凝縮した作品と言えるでしょう。

普段の『HUNTER×HUNTER』が、陽気なノリで残酷な世界を描くことでその暴力をカモフラージュしているのに対し、この表紙は逆です。

可愛らしさという仮面を被せながらも、その奥にある暴力性や不安感を、血まみれのウサギという形で直接的に突きつけてくるのです。

また、冨樫先生は「キャラクターをコントロールできていない時の方が、漫画は面白くなる」とも語っています。もしかしたらこの少女は、作者の計算を超えて、直感的に生まれてきた「何か」なのかもしれません。

真偽不明ながら、「(この少女について)誰かわかりませんでしたか…w」と冨樫先生自身が発言した、なんて噂もあります。作者自身が、この謎を楽しんでいる可能性すらあるのです。

結論:解けない謎だからこそ、俺たちは語り続ける

ビスケ説、アルカ説、没キャラ説…。23年もの間、俺たちファンは様々な仮説を立てては、議論を重ねてきました。

Twitterでは今でも定期的に「15巻表紙のキャラが誰だかわからん」というツイートが流れ、海外のファンからは「伊藤潤二の作品みたいだ」と、国境を越えた評価を受けています。

結局のところ、この少女の正体は、冨樫先生の頭の中にしか存在しないのかもしれません。

でも、それでいいのではないでしょうか。

明確な答えがないからこそ、俺たちはこの一枚の絵を前にして、ああでもないこうでもないと語り合える。世代を超えて、この不気味で魅力的な謎を共有できる。

正体不明の恐怖こそが、この表紙の最大の価値であり、冨樫義博という作家が仕掛けた、最高に面白い「謎解きゲーム」なのですから。

さて、あなたはこの血まみれのウサギを抱いた少女、誰だと思いますか?

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