【ダンダダン】オカルン(高倉健):オタクから最高にかっこいいダークヒーローに変身する主人公

少年漫画の主人公といえば、どんなキャラクターを思い浮かべるだろうか。

底抜けに明るい太陽のようなヤツか、あるいはクールでニヒルな天才か。

しかし今、俺たちが夢中になっているのは、丸メガネをかけたオカルトオタクの高校生だ。

そう、『ダンダダン』の主人公の一人、「オカルン」こと高倉健である。

最初はクラスの隅でイジめられていた、冴えない陰キャ。

それが今や、怪異や宇宙人と渡り合う最強のヒーローになっている。

この凄まじい成長曲線、そして彼が放つ独特の魅力の正体は一体何なのか。

今回は、この現代が生んだ新たなヒーロー像「オカルン」を徹底的に解剖していきたい。

始まりは「冴えない僕」じゃない、「不器用なジブン」

物語の冒頭、オカルンは絵に描いたようなスクールカースト最底辺の少年として登場する。

友達はゼロ。UFOと交信しようと孤独な日々を送り、クラスではイジメの対象。

一人称は「ジブン」。この独特な言い回しからして、すでに彼のコミュ障っぷりが滲み出ている。

だが、彼が他の「冴えない主人公」と一線を画すのは、その根っこにある誠実さだ。

ヒロインの綾瀬桃に助けられた彼は、勘違いから一方的にまくし立て、結果的に肝試し対決へと発展する。

普通の陰キャなら、ここで縮こまってしまうところだろう。

しかし彼は、自分の信じる「UFO」を証明するため、幽霊を信じる桃と真っ向からぶつかる。

そこに描かれるのは、ただの気弱な少年ではない。自分の世界を必死に守ろうとする、不器用だが一本筋の通った男の姿だ。

「ジブン、不器用なんで……」

このセリフは、彼の本質を見事に言い表していると言えるだろう。

彼は人付き合いが下手で、自分の気持ちをうまく伝えられない。

だが、心の中には誰よりも熱く、まっすぐな正義感と責任感を秘めている。

だからこそ、ターボババアに呪われた時も、桃を巻き込むまいと一人で解決しようとした。

この「不器用な誠実さ」こそが、オカルンというキャラクターの全ての魅力の原点なのだ。

呪いが解放した別人格?「ターボババアモード」という名のギャップ萌え爆弾

オカルンの魅力を語る上で絶対に外せないのが、ターボババアの呪いによって得た変身能力だ。

この変身が、もう、とんでもない。

髪は白く逆立ち、口元は剥き出しの歯のようなマスクで覆われる。

普段の坊ちゃん刈りに丸メガネの彼とは、もはや別人だ。

しかし、衝撃的なのは見た目だけじゃない。その内面、特に口調が劇的に変化する。

「ぶらあああ… そーゆーのめっちゃストレス。 萎えるぜ」

あのオドオドしていたオカルンが、いきなりダウナーでヤンキーじみた口調になるのである。

この「萎えるぜ」は、もはや彼の代名詞とも言えるキラーフレーズだ。

普段の几帳面な彼と、変身後のワイルドでファンキーな彼。

この極端なギャップが、読者の心を鷲掴みにする。

しかも、ただ性格が荒くなるだけではないのがミソだ。

第一形態では「スゲェ…!! 力が溢れてくるぜぇ……!! でも すげぇ鬱」と、強大な力を得ながらもド級のネガティブ気質になるという、何とも言えないアンバランスさを抱えている。

強大な力と、それに伴う精神的な代償。この危うさが、彼の戦いをより一層ヒリつかせ、俺たちを惹きつけてやまないのだ。

進化する変身、剥き出しになる闘争本能

ターボババアモードは、戦いが激化するにつれて形態を変化させていく。

特に衝撃的だったのは、メルヘンカルタ戦で見せた第三形態だろう。

歯のようなマスクが大きく裂け、眼鏡は目と一体化する。

その姿は、ヒーローというよりは完全に「怪物」。

しかし、その邪悪な見た目とは裏腹に、彼の心は変わらない。

「彼女を傷つけるヤツは許さない!!彼女の為ならバケモノにだってなってやる!!」

どれだけ異形の姿になろうとも、彼の行動原理は常に「桃を守る」こと。

この揺るぎない芯があるからこそ、我々は彼のどんな姿をも受け入れ、応援したくなるのではないだろうか。

努力する才能。「与えられた力」を「自分の力」に変えた男

異能バトルものの主人公には、「たまたま強大な力を手に入れた」タイプが少なくない。

オカルンも、最初はそうだった。ターボババアの呪いという、いわば借り物の力で戦っていた。

しかし、彼はそこに安住しなかった。

桃の祖母・星子に課された「1日に腕立て伏せ・腹筋・スクワット100回ずつ」という、どこかで聞いたことのあるような脳筋トレーニング。

オカルンは、この地道すぎる課題を愚直に、ただひたすらにこなす。

この泥臭さが、彼のキャラクターに圧倒的な説得力を与えている。

そして、その努力が結実する瞬間が訪れる。

呪いの力をターボババアに返却し、変身能力を失った後の体力テスト。

彼は、もはや超常的な力に頼らずとも、人間離れした身体能力を発揮するようになっていた。

これは、彼が「与えられた力」に頼るだけの存在から、自らの努力で強さを掴み取る「本物のヒーロー」へと変貌を遂げた瞬間だった。

特別な才能がないからこそ、努力する。その姿は、読者である俺たち自身の願望を映し出しているのかもしれない。

無自覚な天然ジゴロ?加速する恋愛模様

『ダンダダン』のもう一つの大きな魅力は、ジェットコースターのような恋愛模様だ。

その中心にいるオカルンは、悲しいかな、超がつくほどの鈍感である。

桃との関係は、もはや読者から見れば両片想い以外の何物でもない。

しかし、当のオカルンは自分の恋心にすら気づいていない始末。

このじれったさが、たまらなく愛おしい。

「他の人にいくら誤解されようが全然良いですけど、綾瀬さんに誤解されるのは嫌だ!!」

こんなセリフを真っ直ぐに言えてしまうのだから、タチが悪い。

本人は必死なだけなのだが、それが結果的に桃の心を揺さぶり、俺たちの心もかき乱す。

彼の魅力は、その誠実さ故に、美少女たちを次々と惹きつけてしまうところにある。

学年人気の美少女・白鳥愛羅からの積極的なアプローチにタジタジになりながらも、決して流されない。

それは彼の中に、無自覚ながらも桃への確かな想いがあるからだ。

陽キャでライバルの円城寺仁(ジジ)が登場してからは、その恋愛模様はさらに加速。

男同士の友情と恋のライバル関係という、少年漫画の王道とも言える構図が、物語をさらに熱くしている。

オカルト、バトル、そしてラブコメ。この奇跡的なバランスの中心に、オカルンは立っているのだ。

まとめ:オカルンは、令和の「等身大ヒーロー」

高倉健、またの名をオカルン。

彼は、決して完璧な主人公ではない。

コミュ障で、不器用で、恋愛には超鈍感。

しかし、彼は誰よりも誠実で、大切なものを守るためならバケモノにさえなる覚悟を持っている。

そして何より、地道な努力を怠らない。

冴えない陰キャが見せるヒーローとしての覚醒、変身がもたらす強烈なギャップ、そして泥臭い努力の末に掴んだ本物の強さ。

これら全てが融合し、「オカルン」という唯一無二のキャラクターを形成している。

彼がこれからどんな成長を遂げ、そして彼の恋の行方はどうなるのか。

この不器用で、最高にクールなヒーローの物語から、まだまだ目が離せそうにない。

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