【ハンターハンター】クロロ=ルシルフルという、幻影旅団の団長にして厨二心をくすぐりまくるキャラ

『HUNTER×HUNTER』に登場する悪役って、なんでこんなに魅力的なんでしょうね。

中でも、悪名高い盗賊集団「幻影旅団」の頭脳にして心臓、クロロ=ルシルフル。

彼の存在感は、もはや作中随一と言っても過言ではないでしょう。

冷徹で、知的で、圧倒的なカリスマで悪党どもを束ねる。

かと思えば、仲間を失い静かに涙を流すセンチメンタルな一面も持つ。

今回は、そんな底知れない魅力を持つクロロ=ルシルフルという男の本質に、少し踏み込んでみたいと思います。

完璧に見えて、どこか不完全。その危うさが魅力の本質

クロロの第一印象といえば、やはり「完璧なリーダー」としての姿でしょう。

額の十字架、漆黒のコート、そして全てを見透かすような静かな瞳。

団員からの信頼は絶対的で、その頭脳と判断力で旅団を導きます。

シルバとゼノというゾルディック家の新旧トップ2人を同時に相手にしても生き延びる戦闘力。まさに完璧超人です。

冷酷無比な思想と、読書家というギャップ

彼の思想は、常人には到底理解できません。

ゴンに「なぜ関係ない人を殺せるの?」と問われた際の、あの有名なセリフ。

「関係ないからじゃないか?」

悪びれる様子もなく、淡々と、まるで世界の真理であるかのように言い放つ。

この底知れない虚無感とサイコパス的な側面は、彼のカリスマ性を際立たせています。

それでいて、普段は静かに本を読んでいることが多いというギャップ。

しかも、あの『ボボボーボ・ボーボボ』を読んでいたというから、もうワケがわかりません。

この掴みどころのなさが、俺たち読者を惹きつけてやまないのでしょう。

致命的な「油断」――完璧な男の人間臭い欠点

しかし、です。

この完璧に見える男、実は作中で結構な「やらかし」をしています。

これこそが、クロロ=ルシルフルというキャラクターの最も人間臭い部分だと俺は思うのです。

まず、ヨークシンシティ編。

クラピカの能力を侮り、結果として捕縛されるという大失態を演じます。

この油断が引き金となり、ウボォーギンとパクノダというかけがえのない仲間を二人も失い、自身は念能力を封じられるという最悪の結末を迎えました。

さらに記憶に新しいのが、ヒソカとの天空闘技場でのデスマッチ。

周到な準備とえげつない戦術でヒソカを追い詰め、見事に勝利を収めました。

しかし、彼は「死体の破壊」を怠った。

その結果、ヒソカは「死後に強まる念」で復活。

報復として、コルトピとシャルナークが惨殺されてしまいます。

自らの油断が招いた惨劇に憔悴しきるクロロの姿は、多くの読者に衝撃を与えたのではないでしょうか。

彼は決して全知全能の神ではなく、時に過ちを犯し、取り返しのつかない後悔をする、一人の人間に過ぎない。

この完璧さと脆さの同居こそが、彼のキャラクターに凄まじい奥行きを与えているのです。

「望んで団長になったわけではない」――悲しき過去が紡ぐ行動原理

なぜ彼は、かくも仲間を想い、その鎮魂に執着するのか。

その答えは、彼の故郷・流星街での過去にあります。

かつてのクロロは、年相応の聡明な少年でした。

しかし、仲間の少女サラサが無残に殺害された事件をきっかけに、彼の人生は一変します。

仲間を守るため、流星街を守るため、彼は自らの人生を捧げて「悪党」となることを決意するのです。

驚くべきことに、クロロは当初、リーダーの座をウボォーギンに譲ろうとしていました。

しかし、ウボォーギンや仲間たちに「頭はお前しかいない」と推され、彼は蜘蛛の頭となりました。

作者自身も「クロロは望んで団長になったわけではない」と語っている通り、彼が背負う十字架は、我々が想像する以上に重いのかもしれません。

彼の全ての行動は、失われた仲間への哀悼と、流星街という故郷への想いに繋がっている。

そう考えると、彼の非道な行いでさえ、どこか悲哀を帯びて見えてくるから不思議です。

究極の厨二能力「盗賊の極意(スキルハンター)」のロマン

クロロを語る上で、その念能力「盗賊の極意(スキルハンター)」は外せません。

他者の念能力を盗み、具現化した本にコレクションして自分のものとして使う。

この設定、ロマンの塊すぎませんか?

制約と誓約、そして進化する能力

もちろん、この強力な能力には厳しい制約があります。

  • 相手の念能力を実際に見る。
  • 能力について質問し、相手が答える。
  • 本の表紙の手形と相手の手のひらを合わせる。
  • これらを1時間以内に行う。

この面倒くさい手順を踏まなければならないという点が、いかにも冨樫作品らしい。

さらに、能力を使うには本を右手に持ち、該当ページを開かなければならないという弱点がありました。

しかし、暗黒大陸編で登場した新能力「栞のテーマ(ダブルフェイス)」によって、この弱点は克服されます。

栞を挟めば本を閉じていても能力が使え、さらに別の能力との併用も可能になるという超絶強化。

「厄介な制約は増えた」と本人は語っていますが、その代償に見合うだけの進化でしょう。

「国宝級のお宝を盗む」ことでレベルアップするという設定も明かされ、彼の能力がまだ成長途中であることが示唆されています。どこまで強くなるんだ、この男は。

借り物の力で魅せる、圧巻のコンビネーション

ヒソカ戦で見せた戦術は、まさに彼の真骨頂でした。

コルトピから借りた「神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)」で大量のコピー人形を作り出し、

「人間の証明(オーダースタンプ)」でそれらを操作。

そして、流星街の長老から受け継いだ「番いの破壊者(サンアンドムーン)」で人形を人間爆弾に変える。

シャルナークの「携帯する他人の運命(ブラックボイス)」で観客を操り、ヒソカをかく乱する。

一つ一つは他人の能力でありながら、それを組み合わせることで無限の戦術を生み出す。

これは、クロロの卓越した知性と応用力がなければ成し得ない芸当です。

余談ですが、シズクがクロロの本を「デスノートみたいですね」と評するシーンがありました。

クロロ役の声優が宮野真守さん(夜神月役)であることを考えると、これは公式からの粋なファンサービスと言えるのではないでしょうか。こういう遊び心、たまりませんね。

まとめ:悪のカリスマは、今日も俺たちを魅了する

クロロ=ルシルフルは、単なる冷酷な悪役ではありません。

圧倒的なカリスマと、時折見せる人間的な油断や脆さ。

悲しい過去に裏打ちされた仲間への深い情愛。

そして、借り物の能力を知略で最強の武器に変える戦闘スタイル。

これらの要素が複雑に絡み合うことで、他に類を見ない、深く、魅力的なキャラクターが生まれているのです。

現在進行中の暗黒大陸編では、ヒソカを「確実に殺す」ために新たな能力を狙っています。

そして、同じ船には因縁の相手であるクラピカも乗船している。

彼らの物語が再び交錯する時、一体何が起こるのか。

これからも、この最も人間臭い悪のカリスマから目が離せそうにありません。

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