ジョジョ1部が面白くないと言われる理由
- 2026.08.21
- ジョジョの奇妙な冒険
で、本音のところ、どうなの? ——ジョジョ第1部『ファントムブラッド』が「面白くない」と言われるの、正直に言うとわかります。しかもこの評価、作品の出来が悪いからではなく、読者が期待していたものと第1部が提供するものがズレているせいで起きている。今回はその構造を分解します。
【ネタバレ注意】以下には第1部『ファントムブラッド』と、第3部以降の能力体系に関する前提の記述が含まれます。各部の結末そのものには踏み込みません。
なぜ第1部だけ「面白くない」と言われるのか
まず前提を整理します。第1部は1986年12月から1987年10月まで『週刊少年ジャンプ』に連載され、単行本は全5巻。第8部までの通算131巻というシリーズの中で、圧倒的に短い部です。
この「全5巻」という数字が、評価のズレを生む最初の要因になっています。
ジョジョを勧められて読み始める人の多くは、100巻を超える大長編としてのイメージを持って1巻を開きます。ところが第1部は5巻で終わる。腰を据えて読み始めた人ほど、助走のつもりだった部分が本編ごと終わってしまう感覚になるわけです。
比較するとわかりやすい。第1部が全5巻なのに対し、第2部『戦闘潮流』は全8巻、第3部『スターダストクルセイダース』は全17巻、第8部『ジョジョリオン』にいたっては全27巻あります。第1部は第8部の5分の1以下の分量しかない。「読み応えがない」という感想は、体感ではなく実際の分量の話でもあるわけです。
もうひとつが連載時期です。1986年開始という年代は、シリーズ最新の第9部から約37年さかのぼります。同じ作者の同じシリーズでありながら、コマ運びも台詞のテンポも当時の週刊連載の作法で書かれている。ここに現代の読者の読み速度とのズレが生じます。
スタンドが出てこないのは致命的なのか
「面白くない」の理由として最も多く挙がるのが、これです。
ジョジョの代名詞であるスタンド能力が本格的に登場するのは第3部『スターダストクルセイダース』から。第1部と第2部は「波紋」という別の能力体系で戦います。
つまり「ジョジョ=スタンドバトル」という認識で第1部を開くと、期待していたものが1ページも出てこない。これは好みの問題ではなく、単純な情報のミスマッチです。
ただ、ここは冷静に見ておきたいところがあります。波紋は「呼吸法で生命エネルギーを操る」という設定で、スタンドのような視覚的な分身は出ませんが、能力バトルの原型としての役割は果たしています。第2部で波紋の応用戦術が一気に広がるのを見ると、第1部は波紋という体系のルール説明の巻として機能していることがわかります。
時期で見ると、波紋が中心の期間は1986年12月から1989年3月までの約2年3か月、巻数にして12巻分です。シリーズ全体の通算131巻に対しておよそ1割。この1割を「スタンドが出てこない期間」と捉えるか「スタンド以前の体系を描いた期間」と捉えるかで、第1部の位置づけは変わります。
問題は、その「ルール説明」の見返りが第1部の中では回収されず、第2部以降でようやく効いてくる構造になっていること。5巻という短さと合わさって、第1部単体で読むと物足りなく感じるのは理屈として自然です。
「3部から読め」というアドバイスは正しいのか
ネット上でよく見る「第3部から読み始めて、後で1部と2部に戻れ」という勧め方。これについて本音を言います。
入口としては合理的です。第3部はスタンドバトルの完成形で、シリーズの代表的なイメージそのもの。ここから入れば期待と中身が一致します。
ただし代償もあります。第1部の敵として登場する人物と、その因縁の決着が第3部の物語の出発点になっているためです。順番を飛ばすと、第3部の前提として提示される関係を「そういうものだ」として受け取ることになる。理解できないわけではありませんが、積み上げの重みは確実に減ります。
ちなみに第3部は1989年3月から1992年4月までの全17巻。第1部の3倍以上の分量があり、シリーズの中でも長い部に入ります。ここから入って合わなければ撤退、という試し方をするには、正直やや重い入口ではあります。第1部の全5巻のほうが、試すコストという意味では軽い。
個人的な結論としては、こうです。「ジョジョが自分に合うか試したい」なら第3部から。「シリーズとして味わいたい」なら第1部から。目的が違えば正解も違う、という話であって、どちらかが間違っているわけではありません。
正直なところ、第1部はどう評価すべきか
批判されている点は、率直に言って事実だと思います。5巻という短さで物語の密度が薄く感じられること、スタンドがないこと、40年前の連載作法であること——どれも「気のせい」で片付けられる話ではありません。
そのうえで、第1部が持っているものを2つ挙げます。
ひとつは台詞回しです。決め台詞の言い切りの強さと、ポーズを含めた見得の切り方は、第1部の時点ですでに完成しています。ここが突き抜けているという評価は、批判的な読者からもよく出てきます。
もうひとつは、主人公と宿敵の関係の作り方です。第1部は「善と悪が同じ家で育つ」という構図を全5巻で提示しきっている。この構図がその後のシリーズ全体の骨格になっていることを踏まえると、5巻の短さはむしろ濃度と読むこともできます。
結局のところ、第1部を「シリーズの序章」として読むか「独立した1作品」として読むかで評価は割れます。どう感じるかは読者次第です。
それでも第1部を読む価値があると思う理由
第1部を通過してから第2部を読むと、体感が変わります。波紋のルールを知っている状態で応用戦を見ると、同じ能力体系がここまで拡張されるのかという驚きがある。第1部が地味に感じられたぶん、その落差が効いてきます。
40年続いたシリーズの最初の5巻が、その後の131巻を支える構図を全部先に置いていた。そう思って読み返すと、第1部の見え方はかなり変わります。公式ポータルサイトの各部紹介を眺めながら通して読むと、この作品が何を積み上げてきたのかがはっきりします。短いからこそ、試す価値のある5巻だと思います。
この記事を書きながら第1部を読み直したら、想像の3倍の速さで読み終わってしまいました。5巻という短さ、今なら完全に長所だと思います。次は第2部の波紋戦術で1本書きたい。
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