【ドラゴンボール】ミスター・サタンという大人になると分かる「真の救世主」

子供の頃、ドラゴンボールを読んでいて、正直ミスター・サタンのことが好きじゃなかった、という人は多いんじゃないでしょうか。

強いZ戦士たちの手柄を横取りするし、口ばっかりでいざとなると逃げ腰。悟空やベジータの真剣な戦いの最中に、寒いギャグをかます姿にイライラした記憶が俺にもあります。

しかし、不思議なものです。

大人になって、社会の理不尽さとか、自分の限界とかを色々知った上でドラゴンボールを読み返すと、彼の見え方が180度変わってくるんですよね。

かつては「ただのウザいおっさん」だった彼が、今では「作中屈指のMVP」「影の英雄」にさえ見えてくる。これは一体なぜなのか。

今回は、単なるギャグキャラでは終わらない、ミスター・サタンの真の功績と、俺たちが彼に惹きつけられる理由を徹底的に語っていきたいと思います。

セル編で見せた「英雄の片鱗」

サタンの再評価を語る上で、まず避けて通れないのがセル編での活躍です。

「え、セル編のサタンってなんか活躍したっけ?」と思うかもしれません。確かに、彼の代名詞「ダイナマイトキック」はセルに全く通用しませんでした。

しかし、彼の行動がなければ、地球はあの時点で終わっていた可能性が極めて高いのです。

地味だけど、物語を動かした超ファインプレー

思い出してください。孫悟飯が超サイヤ人2へと覚醒する、あの伝説的なシーンを。

そのきっかけは、人造人間16号がセルに破壊され、その首だけの状態で悟飯に語りかけた最後の言葉でした。

「オレのスキだった自然や動物たちを…まもってやってくれ…」

この感動的なシーン、実はサタンがいなければ成立しなかったんです。

セルに吹き飛ばされた16号の頭部を、悟飯の元まで放り投げたのは誰か?そう、ミスター・サタンです。

戦闘力的には何の役にも立たない彼が、命の危険を顧みず、チャンピオンとしてのプライドを捨ててまで果たしたこの行動が、結果的に世界の運命を決定づけました。

これはもう、MVP級のアシストと言っても過言ではないでしょう。

恐怖に震えながらも、逃げなかったチャンピオンの意地

サタンは、セルゲームの会場に乗り込んできた時、明らかにビビっていました。

それでも彼は、瓦を14枚割って見せ、セルに対して正面から「ダイナマイトキック」を放ちました。

結果は惨敗でしたが、重要なのはそこではありません。世界中が固唾を飲んで見守る中、「格闘技世界チャンピオン」として、人類の代表として、化け物に立ち向かう責任を果たそうとしたのです。

この行動があったからこそ、彼は世界のヒーローとしての絶大な信頼を勝ち取り、後の魔人ブウ編での奇跡に繋がっていくことになります。

地球を2度救った男、魔人ブウ編での覚醒

セル編での活躍が「英雄の片鱗」だとしたら、魔人ブウ編での彼はまさしく「本物の英雄」でした。

サタンがいなければ地球は間違いなく2回滅んでいた、と断言できるほどの活躍を彼は見せてくれます。

暴力ではなく「友情」でブウを止めた唯一の男

魔人ブウ(善)の破壊を止めるため、サタンは暗殺を試みます。毒入りチョコレート、爆弾入りゲーム機…作戦はどれもコミカルに失敗します。

しかし、ここからが彼の真骨頂でした。

暗殺を諦めたサタンは、ブウと心を通わせ始めます。特に、傷ついた子犬「ベエ」を共に助けたことをきっかけに、二人の間には確かな友情が芽生えました。

そしてサタンは、純粋なブウに「人を殺すのは良くない」と教え、彼の破壊活動を完全に止めさせたのです。

ピッコロが驚愕していたように、Z戦士たちがひたすら「力」でブウを倒そうとしていた中で、サタンだけが「対話」と「友情」という全く別のアプローチで問題を解決しました。

これは、ドラゴンボールという物語において、革命的な出来事だったのではないでしょうか。

悟空ですら無理だった、元気玉完成へのラストピース

物語のクライマックス。純粋ブウとの最終決戦で、悟空は地球の元気を集めて超元気玉を作ろうとします。

しかし、悟空やベジータが必死に呼びかけても、地球人たちはほとんど協力してくれませんでした。

地球滅亡まであとわずか、という絶望的な状況。そこで立ち上がったのが、我らがミスター・サタンでした。

彼の「このミスター・サタンにほんのちょっとでいい!元気をわけてくれーっ!!」という一喝で、状況は一変。全世界の人々が、ヒーローであるサタンのためにと一斉に協力を始め、超元気玉はついに完成します。

ネットでも「サタンが呼びかけるシーンは普通に泣ける」という声が多いですが、本当にその通りですよね。

悟空が言ったあのセリフが、全てを物語っています。

「やるじゃねえかサタン…!おめえはホントに…世界の救世主かもな!」

忘れちゃいけない、土壇場でのベジータ救出劇

元気玉のシーンのインパクトが強すぎて少し忘れられがちですが、その直前にもサタンはMVP級の働きをしています。

悟空が元気玉を溜めている間、純粋ブウの注意を引いて時間稼ぎをしていたベジータは、ボロボロで動けなくなっていました。

このままでは元気玉に巻き込まれてしまう。その絶体絶命の状況で、満身創痍のベジータを担いで安全な場所まで運んだのが、ミスター・サタンだったのです。

セルに吹っ飛ばされたトラウマがあるはずなのに、目の前で暴れる魔人ブウ相手に飛び込んでいくその勇気。もはやセル編の頃の彼とは別人です。

この一連の活躍は、彼が真の勇気を手に入れた紛れもない証明と言えるでしょう。

なぜ大人になるとサタンが好きになるのか?

では、なぜ俺たちはこれほどまでに、大人になってからミスター・サタンに惹かれるのでしょうか。

その理由は、彼の持つ圧倒的な「人間らしさ」にあると俺は考えます。

俺たちと同じ「ただの人間」という圧倒的共感性

ドラゴンボールの世界は、戦闘力のインフレが凄まじいですよね。超サイヤ人だの神だの、もはや常人には理解不能な領域です。

そんな中で、ミスター・サタンは唯一、俺たち読者と同じ目線にいる「ただの人間」です。

とんでもない化け物を前にして、足がすくみ、冷や汗を流す。でも、守るべきもののために、震える足で一歩を踏み出す。

その姿に、俺たちは自分を重ね合わせることができます。完璧なヒーローである悟空にはなれないけれど、弱くて見栄っ張りなサタンの気持ちは、痛いほどわかる。だからこそ、彼が勇気を振り絞る姿に心を揺さぶられるのです。

戦闘力より影響力、現代に通用するヒーロー像

サタンの武器は、かめはめ波でも魔貫光殺砲でもありません。彼の武器は、世界チャンピオンとして培った「人望」と「メディアを使いこなす発信力」です。

これって、現代社会を生きる俺たちにとって、ものすごく示唆に富んでいると思いませんか?

彼は、自分の持つ影響力を最大限に利用して、悟空一人では成し得なかった「地球人全員の協力」という奇跡を引き起こしました。まさに、SNS時代のインフルエンサーの先駆けのような存在です。

物理的な強さだけが全てじゃない。人々の心を動かす力こそが、時に世界を救う。ミスター・サタンは、そのことを身をもって教えてくれます。

結論:真の救世主は、最も人間らしい男だった

こうして振り返ってみると、ミスター・サタンは決して「弱いギャグキャラ」などではありませんでした。

彼は、恐怖を知り、自分の弱さを知りながらも、愛する娘や、自分を信じてくれる人々のために何度も立ち上がった、紛れもない「英雄」です。

彼の強さは、戦闘力の数値では測れない「人間としての強さ」。

子供の頃は孫悟空の圧倒的な強さに憧れ、大人になってからはミスター・サタンの人間的な強さの尊さがわかる。

ドラゴンボールという作品の奥深さを、彼の存在が教えてくれているような気がします。

もしドラゴンボールの世界に転生できるなら、サイヤ人よりもミスター・サタンになりたい。最近、本気でそんなことを考えてしまう今日この頃です。

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