【ダンダダン】綾瀬桃という、「かわいい」だけには収まらないギャップ萌えギャル系ヒロイン

毎週、我々の情緒をジェットコースターのように揺さぶってくる快作『ダンダダン』。

UFOと幽霊がガチで殴り合うという、字面だけ見れば正気を疑う世界観。

その中心に立つのが、主人公の一人、綾瀬桃です。

金髪ボブにギャルファッション。一見すると、どこにでもいる気の強い女子高生。

しかし、読み進めるほどに「いや、この女、只者じゃねえ…」と思わされるはず。

今日は、そんな綾瀬桃というキャラクターが、なぜこれほどまでに我々の心を掴んで離さないのか。

その魅力を、少しばかり深掘りして語っていきたいと思います。

強く、優しく、そして恐ろしく乙女な“ギャップの塊”

綾瀬桃の魅力を語る上で、まず外せないのがその凄まじいギャップでしょう。

彼女はヤンキー気質で、口も悪ければ手も早い。

気に入らないことがあれば、たとえ相手が誰であろうと啖呵を切ります。

しかし、彼女の本質はそこにはありません。

売り言葉に買い言葉で相手を傷つけても、「言いすぎた」と思えば次の瞬間には頭を下げられる。

この潔さと根っこの優しさが、彼女の人間性の核をなしているのではないでしょうか。

そして、このギャル、意外なことにかなり博識です。

高崎線の最高速度やら、カニの身が締まる原理やら、シャコの身体構造やら…。

「なんでそんなこと知ってんだよ!」と、相棒のオカルンでなくともツッコミたくなる知識の数々。

これが単なる雑学自慢で終わらないのが『ダンダダン』の面白いところ。

これらの知識が、土壇場で怪異との戦いを切り抜けるための閃きに繋がるのです。

彼女は脳筋ファイターではなく、咄嗟の機転で仲間を導く司令塔でもあるわけです。

理想の男は「高倉健」。その一点に集約される破壊力

そんなクールでクレバーな彼女ですが、乙女としての側面も持ち合わせています。

しかも、その破壊力が凄まじい。

「いいだろがい!!高倉健みたいな硬派な男が好きなんだよ!!」

このセリフに、彼女の全てが詰まっていると言っても過言ではありません。

イマドキのギャルが、好きな男のタイプに「高倉健」を挙げる。

この一点だけで、もはやキャラが立ちすぎている。

だからこそ、もう一人の主人公、高倉健(たかくら けん)…通称「オカルン」との関係が映えるのです。

普段はオカルンを尻に敷いているように見えて、ふとした瞬間に彼の男らしさにときめいてしまう。

このツンとデレの温度差が、読者の心を的確に焼き尽くしに来ます。

普段のヤンキー言動が嘘のように、恋する乙女の顔になる。

このギャップこそ、綾瀬桃というキャラクターの第一の魅力だと俺は断言したい。

魂を掴む“念動力” ― それは超能力にあらず

綾瀬桃を語る上で欠かせないのが、彼女の駆使する「念動力」です。

セルポ星人との遭遇で覚醒したこの能力は、巨大なオーラの手を操るというもの。

しかし、これを単なる「サイコキネシス」と片付けてしまうのは早計です。

作中で語られるその原理は、もっと霊的で、根源的な力です。

『自分の魂を操って森羅万象に宿る魂に触れる』

つまり、彼女は物質を動かしているのではなく、そのモノに宿る「魂」を直接掴んでいる。

だからこそ、物理的な実体を持たない幽霊すらも捕らえることができるのです。

これは、霊媒師である祖母・星子の血筋を感じさせる設定であり、物語の「オカルト」サイドを担う彼女の役割を象徴していると言えるでしょう。

最終奥義「モエモエ気功砲」という名の愛と恥の必殺技

当初はサポート寄りの能力でしたが、物語が進むにつれて彼女は最強の必殺技を会得します。

その名も「モエモエ気功砲」

…いや、ネーミングセンスよ。

祖母の教えである「言霊の力」と、バイト先のメイド喫茶で習ったパフォーマンスが融合して生まれたこの技。

両手でハートマークを作って「モエ モエ 気功砲おお!!」と叫びながら、超高威力のエネルギー波を放つ。

威力は絶大。食らった敵はほぼ一撃で沈むほどの切り札です。

しかし、その代償として使用者はとてつもない羞恥心に襲われる。

この「クソダサいけど、クソ強い」というバランス感覚が、実に『ダンダダン』らしい。

最強の技を放つために、一番恥ずかしいポーズと掛け声をしなければならないジレンマ。

この人間臭さこそが、綾瀬桃を単なるチートキャラで終わらせない、重要な要素なのです。

彼女はヒロインではなく、物語を牽引する“主人公”である

『ダンダダン』はオカルンと桃のダブル主人公制ですが、俺は綾瀬桃こそがこの物語のエンジンだと感じています。

彼女の行動や決断が、常に物語を前に進めているからです。

  • オカルンとの関係: いじめられていたオカルンに最初に手を差し伸べたのは桃でした。彼女がいなければ、物語は始まらなかったのです。二人のもどかしい恋模様は、過酷な戦いの中の唯一の清涼剤でもあります。
  • 仲間たちとの絆: 当初は犬猿の仲だった白鳥愛羅とも、数々の死線を乗り越える中で唯一無二の戦友となります。「バカ女」から「アイラ」へと呼び方が変わる瞬間は、グッとくるものがありました。
  • 家族への想い: 祖母の星子とは、過去の出来事から確執がありましたが、それも乗り越えていきます。特に、原作のとあるエピソードでは、自分の呪いを解くことよりも、重傷を負った祖母を助けることを優先します。自分が世界から消え去るかもしれない恐怖の中で、彼女が選んだのは「家族」でした。この自己犠牲の精神こそ、彼女が真の主人公である証左ではないでしょうか。

綾瀬桃は、誰かに守られるヒロインではありません。

仲間を守るために先陣を切り、自らの意志で運命を切り開いていく。

その姿は、まさしく「主人公」そのものです。

強く、優しく、クレバーで、ちょっぴり乙女で、そして何より人間臭い。

綾瀬桃は、現代の少年漫画がたどり着いた、一つの理想的な主人公像なのかもしれません。

これからも、彼女がどんな困難に立ち向かい、どんな顔を見せてくれるのか。

一人の読者として、見届けさせてもらおうと思います。

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