【ジョジョ七部】ジャイロ・ツェペリというW主人公であり、最高の相棒。名言や本名の意味を考察

『ジョジョの奇妙な冒険』第7部、「スティール・ボール・ラン」。

この傑作を読んだ人間なら、誰もがこう思うはずです。

「ジャイロ・ツェペリという男が、好きだ」と。

彼は単なる相棒じゃない。物語のW主人公、ジョニィ・ジョースターを「マイナス」から「ゼロ」へと導いた、まさに運命の導き手でした。

彼の有名なセリフに、こうあります。

『一番の近道は遠回りだった』『遠回りこそが俺の最短の道だった』

今回は、この言葉を道標に、ジャイロ・ツェペリという男の魅力を「遠回り」しながらじっくりと解き明かしていこうと思います。

「完璧」じゃないからこそ愛おしい男

ニョホホとチーズの歌のギャップ

ジャイロの第一印象は、なんとも掴みどころのない陽気な男、といったところでしょう。

「ニョホホ」という奇妙な笑い声。

レース中に突然思いついてはジョニィに披露する、謎の「チーズの歌」。

ピッツァ・モッツァレラ♪ レラレラレラレラ……。

しかも、懐には常にクマのぬいぐるみを忍ばせている。

正直、初見の時は「こいつ、大丈夫か?」と思った読者も少なくないはずです。

しかし、この一見すると緊張感のないおちゃらけた態こそが、彼の魅力の入り口。

過酷なSBRレースという舞台において、彼の存在は一種の清涼剤であり、読者の心をほぐすための重要な役割を担っていました。

この飄々とした姿が、後に見せる彼の覚悟や哲学との強烈なギャップを生み出し、俺たちの心を鷲掴みにしてくるのです。

死刑執行人と医者、二つの顔

彼のふざけた態度の裏には、とてつもなく重いバックボーンが隠されています。

ジャイロは、ネアポリス王国の「死刑執行人」を代々務めるツェペリ家の長男。

人の命を奪うことを生業とする家系です。

しかし、その一方でツェペリ家は表の顔として医者も家業としており、ジャイロ自身も優れた医療技術を身につけています。

「生」を救う医者と、「死」を与える死刑執行人。

この矛盾した二つの顔を持つことこそ、ジャイロ・ツェペリというキャラクターに圧倒的な深みを与えています。

彼は、無実の罪で処刑されそうになった少年マルコを救うため、国王の恩赦を求めてレースに参加します。

自分の家業が持つ「非情さ」と、自分自身の「倫理観」との間で葛藤し、それでも自分の信じる道を進もうとする。

その人間臭さこそが、彼を単なる「クールなイケメン」で終わらせない、最大の要因なのではないでしょうか。

ジャイロが示した「ツェペリ魂」の集大成

「納得」を求める哲学

ジャイロの人間性を語る上で、リンゴォ・ロードアゲインとの戦いは避けて通れません。

そこで彼が口にした言葉は、彼の生き様そのものを表していました。

「納得」は全てに優先するぜッ!!

彼は、ただ勝利するため、生き残るためだけには戦わない。

自分が「納得」できるか。そこに彼の行動原理のすべてが集約されています。

敵であるリンゴォの覚悟を認め、敬意を払い、そして己の「納得」のために全霊で立ち向かう。

この確固たる哲学があったからこそ、彼はジョニィにとって単なる技術の師匠ではなく、精神的な支柱となり得たのです。

下半身不随となり、絶望の淵にいたジョニィに「回転」の技術だけでなく、人として再び立ち上がるための「意志」を与えたのは、間違いなくジャイロのこの「納得」の哲学でした。

「漆黒の意志」を導く光

ジョニィが抱く「漆黒の意志」は、目的のためなら他人を犠牲にすることも厭わない、危ういものでした。

その危うさを常に正しい道へと引き戻していたのが、ジャイロです。

彼はジョニィに「LESSON 5」まで、回転の技術とその心構えを教え込みました。

これは、かつてジョースター家に「波紋」を伝えたウィル・A・ツェペリ、そしてジョセフと共に戦ったシーザー・A・ツェペリが果たしてきた役割の、まさに集大成と言えるでしょう。

「ツェペリ家」の人間は、いつの時代も「ジョースター家」の人間を導き、その成長を見届けて散っていく宿命にあるのかもしれません。

しかし、ジャイロとジョニィの関係は、それまでのどのコンビよりも深く、対等な「相棒」として描かれています。

師であり、友であり、時にはふざけ合う兄弟のようでもある。

この絶妙な距離感が、二人の旅路をより一層ドラマチックなものにしているのです。

なぜ彼は「シーザー」でなければならなかったのか?

本名に隠された宿命

物語の終盤、ジョニィとの絆が極限まで高まった時、ジャイロは自らの本名を明かします。

ユリウス・カエサル・ツェペリ。

「カエサル」は、読み方を変えれば「シーザー」。

この名を聞いた瞬間、シリーズを追い続けてきたファンなら、誰もが息を呑んだはずです。

第2部『戦闘潮流』で、ジョセフ・ジョースターの最高の相棒として戦い、壮絶な最期を遂げたあの男、シーザー・A・ツェペリと同じ名前。

これは単なるファンサービスではありません。

作者から読者への、「覚悟しろ」というサインだったのではないでしょうか。

ツェペリという姓を背負い、シーザーという名を持つ彼が、この物語でどのような運命を辿るのか。

その名前が明かされた瞬間、彼の結末は、ある意味で決定づけられていたのかもしれません。

あまりにも残酷ですが、それこそが『ジョジョの奇妙な冒険』という物語が持つ、抗いがたい「引力」なのです。

「相棒」を超えた存在へ

ジャイロ・ツェペリは、ジョニィ・ジョースターの人生そのものを変えました。

彼がいなければ、ジョニィは絶望の中で人生を終えていたでしょう。

歩くことさえできなかった青年が、自らの足で立ち、過酷な運命に立ち向かうことができたのは、ジャイロという光が常にそばにあったからです。

彼はジョニィを「マイナス」から「ゼロ」へと引き上げ、そして「プラス」へと向かう道を指し示してくれました。

だからこそ、ジョニィは彼の遺体を故郷へ連れて帰るために、最後の最後まで戦い抜いた。

それはレースの賞金や名誉のためではない。

たった一人の、かけがえのない友への、最大限の感謝と敬意の証だったのです。

おちゃめで、人間臭くて、どこか抜けているけれど、誰よりも強く、優しい芯を持っていた男、ジャイロ・ツェペリ。

彼の鉄球が描く黄金の回転は、物語が終わった今も、俺たちの心の中で永遠に輝き続けています。

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