【チェンソーマン】岸辺はなぜ「最強」なのか?渋いオヤジの魅力と隠された人間味に迫る

『チェンソーマン』という、マトモな奴がほとんどいない世界。

その中でもひときわ異彩を放ち、多くの読者の心を掴んで離さない男がいます。

そう、公安対魔特異課が誇る「最強のデビルハンター」、岸辺隊長です。

初登場時は、ただただヤバいオッサンという印象だったかもしれません。

しかし物語が進むにつれて、その圧倒的な強さと、ふとした瞬間に見せる人間味に、気づけば惹きつけられていた…なんて人も多いのではないでしょうか。

今回は、この岸辺という男の魅力について、彼の「強さ」と、その裏に隠された「優しさ」や「哀愁」をじっくりと掘り下げていこうと思います。

「最強のデビルハンター」の看板は伊達じゃない

岸辺の強さを語る上で、まず外せないのがデンジとパワーを指導したあの地獄の特訓でしょう。

文字通り、何度も何度も彼らを「殺し」、戦闘のイロハを叩き込む。

もはや教育というより、ただの拷問に近いあのスパルタっぷりは、読者に強烈なインパクトを与えました。

デンジとパワーが二人で知恵を絞って挑んでも、まったく歯が立たない。

その戦闘スタイルも、契約悪魔の能力に頼るのではなく、卓越したナイフ術と、老人とは思えないほどの身体能力がメインです。

シンプルだからこそ、彼の戦闘経験の豊富さと、フィジカルの異常さが際立っていますよね。

彼の強さの根源には、一つの哲学があります。

「悪魔が恐れるデビルハンターは頭のネジがぶっ飛んだ奴」

この持論を自ら体現するため、常に酒を飲んで酔っ払い、正気から距離を置いている。

マトモな精神では、仲間が次々と死んでいくこの仕事をやっていられない、という悲痛な叫びにも聞こえます。

彼の強さは、生まれ持った才能だけでなく、数え切れないほどの死線を乗り越え、多くの仲間を失ってきた経験に裏打ちされたものなのです。

冷徹な仮面の下に隠された「人間臭さ」

しかし、岸辺がただのイカれた戦闘狂だったら、ここまで人気は出なかったでしょう。

彼の真の魅力は、その冷徹な仮面の下に隠された、驚くほど「人間臭い」部分にあります。

その最たる例が、姫野先輩とのエピソードです。

「毎月バディの墓参りに来てるようじゃ頭のネジは固いままだぞ」

そう言って突き放す一方で、彼は死んでいった姫野のバディたちの名前を全員、完璧に覚えていました。

このシーンで、岸辺というキャラクターの評価が180度変わった人も多いのではないでしょうか。俺は変わりました。

この不器用な優しさは、デンジとパワーに対しても向けられます。

最初はただの「兵器」として、非情な訓練を施していたはずが、いつの間にか情が移ってしまう。

マキマとの会食で「彼らの死を見たくなくなった」とぼやく姿は、彼が単なる教官ではなく、一人の保護者のような感情を抱き始めていたことを示唆しています。

そして、マキマに対して放ったこのセリフ。

「………お前がどんな非道を尽くそうと 俺の飼い犬を殺そうと 人間様の味方でいる内は見逃してやるよ」

これは、彼の根底にある正義感と、守るべきもの…すなわち「飼い犬」と呼んだ教え子たちへの深い愛情が凝縮された、作中屈指の名言と言えるでしょう。

普段の飄々とした態度からは想像もつかない、彼の覚悟が垣間見えた瞬間でした。

あと、ニャーコを「ニャンボちゃん」って呼ぶお茶目さも忘れてはいけません。ギャップがすごい。

狂犬と呼ばれた過去と、クァンシとの関係

岸辺という男の人物像をさらに深くしているのが、単行本のおまけページで明かされた彼の過去です。

今の金髪ツーブロックの渋い姿からは想像もつきませんが、若い頃の彼は黒髪の美青年。

しかも、「狂犬岸辺」と呼ばれるほど粗暴で、女好きな軽薄な男だったというから驚きです。

そして何より衝撃的なのが、中国のデビルハンター、あのクァンシと9年以上もバディを組んでいたという事実。

岸辺は彼女にベタ惚れで、何度もアタックしてはその度にボコボコにされていたようです。

最終的に、クァンシが女性を愛する人間だと知り、彼の恋は終わります。

この経験が、今の達観したような、どこか物悲しい雰囲気の岸辺を形作ったのかもしれません。

「最強のデビルハンター」が抱える、一つの大きな失恋。

この過去を知ることで、刺客篇でのクァンシとの再会シーンが、より切なく、味わい深いものに見えてきます。

彼のキャラクターに深みと哀愁を与えているのは、この報われなかった恋の記憶に他ならないでしょう。

まとめ:我々が岸辺に惹かれる理由

こうして見ていくと、岸辺の魅力は単なる「強さ」だけではないことがよくわかります。

圧倒的な実力と、教え子を想う不器用な優しさ。

冷徹なプロフェッショナルとしての顔と、過去の恋に破れた一人の男としての顔。

このどうしようもない「人間臭さ」こそが、我々読者を惹きつけてやまない岸辺というキャラクターの核なのではないでしょうか。

彼は、狂った世界で正気を保つためにネジを外し続ける、誰よりもマトモで、誰よりも優しい男なのです。

第2部ではまだ登場していませんが、きっとどこかで生きているはず。

再び彼が物語にどう関わってくるのか、酒でも飲みながら気長に待ちたいものですね。

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