マキマ賛否を整理|なぜ愛されなぜ拒まれるのか

【ネタバレ注意】本記事には『チェンソーマン』第1部(公安編)終盤までのネタバレが含まれます。マキマの正体や最終決戦に触れるので、未読の方はそっと閉じてくださいね。

今日も推しの話をさせてください。マキマの話です。「マキマって結局なんだったの?」「冷酷すぎて好きになれない」「いやあれは魔性の魅力でしょ」――この女、いまだに評価が真っ二つに割れてるんですよ。私は『推しの子』のあと『チェンソーマン』を読み返して、改めてマキマに殴られたんですけど、その理由をちゃんと言葉にしたい。

目次

マキマというキャラの『何が』議論を呼んでいるのか

まず整理させてください。マキマは公安対魔特異4課のリーダーで、その正体は「支配の悪魔」――自分より程度が低いと感じた相手を意のままに操る能力を持つキャラクターです(声優は楠木ともりさん)。第1部では味方ヅラしてデンジを家畜のように管理し、最終的にデンジによって細切れにされ、料理されて食べられるという、ジャンプ史上もっとも異様な最後を迎えました。

議論の中心はだいたい3つに集約されます。(1)「冷酷で人として最低なのに、なぜ人気投票2位なのか」、(2)「マキマは『悪役』なのか、それとも哀れな存在なのか」、(3)「デンジに対する仕打ちは”愛情”と呼べるのか」。私が見てきたSNS・5ch・コメント欄の議論は、ほぼこの三角形のなかで回っています。順に向き合っていきます。

マキマを『好き』と言う人たちの主張

論点1:『ヤバさ』が魅力に昇華している

これ、わかる人にはめちゃくちゃわかるんですけど、マキマって「途中から絶対にヤバい奴だと気づくのに、それでも目が離せなくなる」んですよね。ぱっちりした瞳、長いまつげ、編み込んだ髪、穏やかな声。それでデンジに「俺の犬になるか?」と問いかける。あの落差そのものが彼女の存在意義です。

SNSで一番見かけたのは「ヤバいんだけど好き止められない、麻薬みたいなキャラ」という声。アニメイトタイムズや女性向けメディアの感想でも「冷酷さと可愛らしさのギャップが議論を呼ぶ」と紹介されています。つまり、ファンは『マキマが優しい人だから好き』なのではなく、『マキマがヤバい人だと知ったうえで好き』なんです。私はこれ、創作キャラクターへの愛のかなり成熟した形だと思っています。

論点2:『支配される心地よさ』を恐ろしいほど描き切った

もうひとつの賛成派の主張は、「人間が支配されたがる弱さ」をここまで露悪的に描いたキャラは少ない、というもの。デンジは家がない、金がない、愛されたことがない――その全部をマキマは安心と引き換えに差し出してきます。読者はデンジに重なって「あ、これは抜け出せない」と理解する。

支配の悪魔は「自分より下」と思った相手を操る存在です。だからこそ、マキマに惹かれた登場人物の数だけ、彼女の能力の射程が証明される。怖い、でも構造として美しい。私自身、初読のときは怖さしか感じなかったんですけど、再読でようやく「これは支配される側の物語でもあるんだ」と気づいて、それから好きになりました。

論点3:『悪役』ではなく『願いを持った悪魔』として描かれている

賛成派が一番強く言うのがここ。彼女は単なる悪役ではない。「チェンソーマンを使ってより良い世界を作りたい」という願いがあります(アニメイトタイムズ・DIGLE MAGAZINEなどの解説でも繰り返し触れられているポイントです)。歪んでいる、でも願いは本物。死・戦争・飢餓・病をすべて消したい――それを成すために自分よりさらに上位の概念を欲している。

「悪役らしい悪役」ではなく「願いを抱えた悪魔」だからこそ、彼女の最期がただ気持ちいいだけのカタルシスにならず、読み手に重い余韻を残すんですよ。ここを評価できる人は、だいたいマキマを『好き』と言います。

マキマを『受け付けない』人たちの主張

論点1:デンジへの仕打ちは『愛』ではない

反対派でいちばん強い意見はこれ。「彼女がデンジを犬扱いしているだけで、あれを”愛”と呼ぶのは違う」。私もこの主張、ものすごくわかります。支配の悪魔である以上、彼女の関心は対象を支配下に置けるかどうかにある。そこに我々が呼ぶような恋愛感情があるかは、原作を読むかぎりかなり怪しい。

「マキマ=デンジを愛していた」とする読みは、賛成派が彼女を救済しすぎている、という反論になります。「最後は哀れなキャラだった」という解釈は、デンジ視点ではフェアじゃない。あの仕打ちのあとに同情を回収するのは早すぎる、という声は実際にレビューサイトで多数あります。

論点2:『冷酷な美人キャラ』のテンプレに乗ってしまった

もうひとつの厳しい意見。「結局あのキャラって『美人で謎めいて冷酷な女』というテンプレを、ヤバさのレベルだけ最大化しただけじゃないの?」というもの。冷たい美女という型は古今東西の漫画に山ほどあって、その意味で彼女は”新しさ”より”極端さ”で評価されているのでは、という指摘です。

これは私も完全には反論できないところで、もしマキマが男性キャラだったら、ここまで人気投票2位に来ていたかは正直わからない。容姿の魅力にバフがかかっている部分は確実にあると思います。ファンの一人として、ここは目を逸らさず受け止めたい論点です。

論点3:『食べられて終わる』結末への戸惑い

第3の反対意見は、結末への違和感。マキマは第11巻、96〜97話あたりで決着がつき、デンジは彼女の肉を生姜焼き・ハンバーグ・カツ・寿司などあらゆる料理に変えて食べ尽くしました。これは原作の象徴的シーンとして語られる一方で、「結末が露悪的すぎてキャラとして葬られた感じがする」「あんなに魅力的だったのに、人ではなく素材として終わるのは寂しい」という意見も根強い。

これ、わかる。わかるんですよ。あの結末は『デンジがマキマを取り込んで自分の一部にする』という意味で、第1部の主題的な決着としては完璧なんです。でも”キャラ愛”の視点から見ると、マキマがマキマとして送り出されなかった寂しさが残る。賛否が分かれるのはここの解釈ズレが大きい。

客観データで見ると

議論の温度感を数字でも見ておきます。集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイトで実施された第3回チェンソーマンキャラクター人気投票で、マキマは2位を獲得しました(公式発表)。第2回投票でも上位常連で、これは「嫌われていれば票は入らない」というシンプルな事実を示しています。

連載の流れも整理すると、『チェンソーマン』第1部「公安編」は『週刊少年ジャンプ』2019年1号から2021年2号まで連載され、第2部は『少年ジャンプ+』で2022年7月から2026年3月まで続きました(ウィキペディア・コミックナタリー等での発表に準拠)。マキマが死亡したあと、支配の悪魔自体は概念として消滅せず「ナユタ」という少女として転生する――この展開も、賛否両派が「マキマというキャラはどう”終わった”のか」を議論し続ける土台になっています。

ミサキの見解

ここからは私個人の話、長くなります。ごめんなさい。

結論から言うと、私は『マキマを愛している』派です。でもそれは「マキマがいい人だから」ではないし、「美人だから」でもありません。マキマというキャラクターが、「人を支配したい欲望」と「より良い世界を作りたい願い」を同じ顔で抱えていたから、です。あれは欠けた人間の、欠けたままの願いなんですよ。誰かを完全に支配しないと安心できない人間が、それでも世界をマシにしたいと思っている。歪んでいる、でも人間の弱さの極北として正直すぎる。

反対派の「あれを愛と呼ぶな」という主張、これは私も全面的に同意です。デンジに対するマキマの行為は、私たちが普段呼ぶ”愛”とは別物。だから私はマキマを『好き』と言うときに、それを「彼女がデンジを愛していたから好き」と言ったことは一度もない。彼女は愛せなかった人で、愛せないまま願いを持っていた人だ、という読み方をしている。

「美人キャラのテンプレ」という指摘も大切です。藤本タツキ先生がマキマに与えた造形は確かに男性読者の好みに刺さる方向に振られている。でもテンプレを引き受けたうえで、その上に支配の構造、願い、最後の食事という三段ロケットを積んだ。テンプレを使うことと、テンプレに留まることは違う。私はマキマがテンプレを離陸したキャラだと思っています。

結末については、正直いまでも複雑な気持ちです。デンジが生姜焼きを食べる場面で、私は最初「えっこの作者は何を見せたいの」と本気で混乱して、3回読み返してようやく『マキマを内に取り込むことでデンジが彼女から自由になる』という意味を理解しました。あの結末がマキマのキャラ性に対するフェアな送り方だったかは、いまも結論を出せていません。だからこの論点については「賛成派寄り、ただし反対派の寂しさはずっと抱えている」が正直な立ち位置です。

マキマをどう読むかは、最終的に「あなたが支配する側にいるか、される側にいるか、どちらも経験したことがあるか」で変わるんだと思います。だから、この議論には正解がない。あなたの読み方を、私は否定しません。

まとめ ― 何を持ち帰ればいいか

マキマというキャラクターは、「冷酷さと可愛らしさ」「支配と願い」「悪役と哀れさ」――対立する性質を一身に背負ったから、ここまで議論を呼ぶ存在になりました。賛成派は彼女の構造的な美しさを愛し、反対派はデンジへの仕打ちと結末の露悪性に違和感を持つ。どちらも、マキマというキャラを真剣に読んだ人の感想です。だから「好きか嫌いか」より、「自分は彼女のどこに反応したのか」を言語化するほうが、この議論は何倍も楽しい。


正直に言うと、私は先週まで『推しの子』のアクアが最推しだったのに、マキマ記事を書くために読み返したら見事に持っていかれました。推し変ばっかりしている女ですみません。でもこれが感情で作品を読むということだと思っています。

チェンソーマンの記事

まだデータがありません。

コメント