【チェンソーマン】銃の悪魔の評価が下がりすぎ?最強のラスボスから哀れな兵器への転落劇を徹底解説

『チェンソーマン』という作品を語る上で、絶対に外せない存在がいます。

そう、「銃の悪魔」です。

物語の序盤から、全てのデビルハンターが追い求める「最強の悪魔」として、その名は轟いていました。

早川アキにとっては家族を奪った不倶戴天の敵であり、彼がデビルハンターになった理由そのもの。

多くの読者が「こいつがラスボスなんだろうな」と固唾を飲んで見守っていたはずです。

しかし、物語が進むにつれて、俺たちの予想はとんでもない形で裏切られていくことになります。

今回は、かつての最強候補「銃の悪魔」が辿った、あまりにも悲しく、そして皮肉に満ちた転落劇を振り返っていきましょう。

恐怖の象徴だった「あの頃」

物語の初期、銃の悪魔はまさに「絶対的な恐怖」の象徴でした。

なにせ、その被害規模が尋常じゃない。

11月18日 午前10時

『銃の悪魔』 日本に26秒上陸

5万7912人 死亡

わずか数秒大陸に上陸しただけで、数万、数十万という命を刈り取る。

その登場シーンは、淡々と犠牲者の名前がページを埋め尽くすというトラウマ級の演出で、多くの読者に衝撃を与えました。

全世界での合計死者数は120万弱。しかも、要した時間はわずか5分程度。

この圧倒的な破壊力とスピード感は、「最強」の名にふさわしい絶望感を俺たちに植え付けたわけです。

この時点では、誰もがデンジと銃の悪魔の最終決戦を夢想していたんじゃないでしょうか。

アキの復讐は果たされるのか、デンジはどうやってこの絶望的な敵に立ち向かうのか、と。

第一の衝撃:え、もう倒されてるの?

そんな読者の期待を、マキマさんはいとも容易く粉砕してくれます。

サムライソード編が終わり、公安が集めた肉片が本体への道を示した、まさにその時。

マキマの口から語られたのは、信じがたい事実でした。

「銃の悪魔は既に倒されて拘束されているの」

……は?

マジで声が出た読者も少なくないはずです。俺もその一人でした。

ラスボスだと思っていた存在が、物語が始まる前にとっくに誰かに倒されていた。もはや公式からの特大のネタバレです。

しかも、その亡骸はバラバラにされ、アメリカが20%、ソ連が28%…といった具合に、各国が「核兵器に代わる抑止力」として分割保有しているというのです。

アキたちが血眼になって追いかけていた仇は、とっくに意識のない肉塊と化し、大国間のパワーゲームの道具に成り下がっていた。

つまり、アキの復讐は、最初から「一人相撲」でしかなかった。このあまりにも残酷な真実は、物語に一気に不穏な空気を持ち込みました。

「銃の悪魔を殺す」という目的が消えた時、デビルハンター達の物語はどうなってしまうのか。そんな不安を抱かせた衝撃の展開でしたね。

第二の衝撃:ただの「生物兵器」としての再登場

物語は終盤、アメリカ大統領がマキマを排除するため、最後の切り札を使います。

それが、自国が保有する20%の銃の悪魔の復活でした。

「アメリカ国民全員の寿命1年」を対価に、ついにその姿を現した銃の悪魔。

そのビジュアルは、俺たちの想像を絶するほど悍ましいものでした。

無数の銃が溶け合った巨体に、夥しい数の人間の生首が生えている。

もはや悪魔というより、過去の犠牲者たちの怨念が集まった集合体のような、ただただ不気味な存在。

そこに知性はなく、契約に従って無差別に殺戮を繰り返すだけの「兵器」。

誕生月や性別、年齢で対象を絞って即死させる能力は、効率的すぎて逆に生物感がありません。

恐怖の対象だったはずなのに、その有り様はどこか哀れですらありました。

そして、満を持して登場したにもかかわらず、マキマさんのチート能力の前には為す術もなく、あっさりと返り討ちにされてしまいます。

最強の悪魔の威厳は、この時点で完全に地に堕ちたと言えるでしょう。

ちなみに、この銃の悪魔が上陸した秋田県にかほ市は、作者である藤本タツキ先生の出身地だとか。郷土愛の表現方法が独特すぎます。

最後の衝撃:まさかの“パーツ”化という最終形態

これで終わりかと思いきや、銃の悪魔の転落劇はまだ続きます。

第2部で明かされたさらなる事実。それは、銃の悪魔が「ある悪魔の眷属の一体だった」というもの。

もはや独立した一個体ですらなく、誰かの部下だったという衝撃の出自。

そして最終的には、その母親とも言える悪魔の能力によって、各国が保有していた残りの肉体も全て呼び戻され、融合させられてしまいます。

その結果生まれたのが、「銃右腕鎧(ガンライトガントレット)」

そう、かつて世界を恐怖に陥れた最強の悪魔は、最終的に誰かの腕のパーツ、ただの武器に成り果ててしまったのです。

恐怖の象徴から始まり、国家間の抑止力(兵器)となり、最後は誰かの身体の一部(武器)になる。

これほどまでに「武器」としての役割を全うさせられたキャラクターも珍しいんじゃないでしょうか。

銃の悪魔の物語は、徹頭徹尾、他者の都合に利用され続けるだけの、あまりにも物悲しい物語だったと言えるのかもしれません。

銃の悪魔とは、一体何だったのか

結局のところ、銃の悪魔は『チェンソーマン』という作品の「セオリー破壊」を象徴する存在だったのではないでしょうか。

読者が抱く「最強の敵」「ラスボス」という思い込みを鮮やかに裏切り、物語を予測不可能な方向へと導くための、最高のトリックスターだったのです。

彼の存在は、強大な力がいかに人間のエゴや欲望によって歪められ、利用されていくかを痛烈に描いています。

ただ、一つだけ残された大きな謎があります。

13年前に、意識を失うほどのダメージを銃の悪魔に与えたのは、一体誰だったのか。

ファンの間では様々な考察が飛び交っていますが、その真相は未だに闇の中です。

もしかしたら、この謎が解き明かされる時、俺たちは再び『チェンソーマン』の世界の深淵を覗くことになるのかもしれませんね。

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